6-2 わ、私のプリンのカップ返してぇぇぇ!!
突風の妖精がランドセルをガバァッと開けた瞬間、そこから凄まじい風圧が噴き出した。まるで竜巻の芯を直に叩き込まれたかのように、沙月の部屋全体が震え上がる。
「きゃああああ!? 部屋がぁぁぁぁ!!」
沙月の悲鳴もかき消す勢いで、散らかっていた衣類、読みかけの漫画本、脱ぎ捨ての靴下、そして空のプリンカップまでが空を舞う。
「わ、私のプリンのカップ返してぇぇぇ!!」
沙月は必死に手を伸ばすが、紙くずとティッシュと混ざって高速回転するカップは、もはやただの飛翔物体だ。
「部屋の中がカオスだね……」兎子は半眼で見上げる。
「これではただでさえ汚い部屋が、さらに三次元的に汚くなる」真子が冷静に分析する。
「黙れぇぇぇ! 俺の突風で全員まとめて吹き飛ばしてやる!!」
妖精の怒号とともに風はさらに強まり、部屋は地獄絵図と化していった――。
「許さん! 今から俺の突風で全員を吹き飛ばす!!」
突風の妖精が両腕を広げた瞬間、ランドセルから再びビュオォォォッと風が噴き出した。まるで見えない怪物が暴れ狂っているかのように、壁が鳴り、天井の電球がぐらぐらと揺れる。
「ぎゃあああ! やっぱり敵だったぁぁぁ!!」
沙月は布団を抱きかかえ、ベッドの上で大暴れ。
「当然だ。挑発したのはお前だぞ」
真子はゴーグルを直しながら冷静に言い放つ。
「……やっぱり私まで巻き込まれるんだ」
兎子は顔をしかめ、舞い上がるプリンカップとティッシュの雨を避けながら肩を落とした。
床はもう足の踏み場もなく、天井から壁まで散乱物が弾丸のように飛び交う。
風の咆哮が室内を支配し、ただのからかい合いだった空気は一変――戦闘の幕が切って落とされた。
突風が渦を巻き、紙や衣類が宙を舞い続ける混沌の部屋。
必死でクッションを抱え込んで風圧に耐えながら、沙月は半泣きで叫んだ。
「こ、こんなの戦ってられないよ! もう部屋から逃げよう!!」
風に煽られた髪をぐしゃぐしゃにしながら、必死にドアの方向を指差す。
まるで子供が「家に帰る!」と駄々をこねるかのような必死さだ。
その様子に、兎子と真子は目を合わせる。
沙月の提案をどう受け止めるべきか――一瞬の沈黙。
けれど二人の瞳には、同じ色が浮かんでいた。
「(……やっぱり言うと思った)」
その無言の視線のやり取りが、嵐の中で妙に鮮やかに交わされるのだった。




