5-1 俺はただの風じゃない!!
夜。
沙月の部屋は、いつも通りの散らかり放題スペシャル状態だった。
ベッドの上に積み上げられた漫画本、床に放置されたクッション、机に散乱するプリント類。本人いわく「整理途中」だが、第三者の目にはただのカオスである。
「ふあぁ……明日から片付けよ……」
いつものようにダラけモードで転がっていた沙月の髪が、不意にふわりと浮いた。
次の瞬間――
ゴォォォォォッ!!
爆発したかのような突風が部屋に吹き込み、散乱していた物体すべてが舞い上がる!
プリントが紙吹雪となり、漫画本がミサイルのように宙を舞い、ゴミ袋の中身まで飛散して阿鼻叫喚。
「わああああ!?なにこれ台風!?私の部屋がさらに散らかっちゃうじゃん!!」
沙月は布団にしがみつき、絶叫する。
その横で兎子は冷めた顔。
「……お姉ちゃんの部屋、もともと散らかってるから変わらないよ」
「変わってるよ!紙が舞ってる!ゴミが空中戦してる!!」
そして、扉の近くで腕を組んでいた真子が冷静に総評した。
「いや、悪化はしている。元から汚いのに加えて飛翔物で危険だ」
沙月「言い方ぁぁぁ!!」
突風はさらに勢いを増し、まるで部屋そのものが竜巻の中心になったかのようだった。
散乱したティッシュが白い蝶の群れのように舞い、クッションは空中ブランコ、果ては脱ぎ捨てられた靴下まで空を飛んでいる。
「ひぃぃぃ!洗濯物が空襲してくるぅぅ!」
沙月が布団を盾にして叫ぶ。
「……もともと出しっぱなしにするお姉ちゃんが悪い」
兎子は冷静に避けながら皮肉を飛ばした。
「……来るぞ」
真子の低い声と同時に、部屋の中心に影が現れた。
風に巻かれるようにして現れたその姿は――どう見ても少年。
黄色い通学帽に半ズボン、背中にはランドセル。
小柄な体で仁王立ちし、風を操るかのように胸を張る。
「……子供?」
沙月が目を丸くした。
その「少年」はピタリと指を突きつけ、誇らしげに名乗った。
「俺は――風の妖精!」
「え?風の妖精なの?」
沙月が素直に反応すると、少年の顔が真っ赤に染まる。
「ちがーーーうっ!!!俺はただの風じゃない!!突風の妖精だ!!」
威勢のいい名乗りに合わせて、ゴォッと部屋の中を新たな突風が駆け抜けた。
その余波でゴミ袋の中身が天井に貼りつく。
「……うわぁ、ゴミが雨みたいに逆流してる……」
沙月は泣きそうな声で呟いた。




