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冒険者が足を踏み入れるたび、その構造を千変万化させる巨大迷宮。その深奥に秘められた財宝。夢見る新人冒険者だった私は、自らが前人未到、難攻不落の迷宮の踏破者となることを無邪気に確信していた。しかし、私の淡い希望を無惨に挫くものがあった、――死だ。そしてそれは、また、私に降りかかろうとしていた。
一般的な冒険者にとって、死とは最も近き隣人である。だが、多くの夢見る新人冒険者は、その事実を忘れがちだ。大志を抱いて王都に辿り着き、貿易商や銀行家の甘言に誘われて、幾千の条項(無論、法的に無学な一般的な冒険者にとって有利に働くものなど殆どない)が記載された契約書に盲目的に署名し、支払われた前金が一晩の酒代に消えるとき、死などというものは頭の片隅にすらなく、現実からかけ離れたある種の幻想、杞憂だと錯覚する。しかし、そのとき既に逃れざる死の影は冒険者の背後に忍び寄り、冷たい短剣の切っ先を研ぎ澄ませているのだ。
そして、意気揚々と王都の城門を潜り抜けたのち、ある時は荒野で、ある時は洞窟で、ある者には英雄的、ある者には悲劇的な一幕に、死神は冒険者の肩を叩く。
私に訪れたそれは、(ある種の洞窟での出来事ではあったが)詩歌として歌われるほど英雄的でも、悲劇的でもなかった。一般的な冒険者にとって最もありふれた死。すなわち『小鬼の棍棒による死』だった。私を取り巻く小鬼の忌々しく甲高い笑い声、脳天から滲み出す血流、身体の末端から流れ出ていく生命の微熱。薄れゆく意識の中で、小鬼が握る錆びた大鉈の刀身が、松明に照らされて鈍く光ったのが見えた。小鬼は奇声を上げると、その野蛮な粗い刃を私の首筋に振り下ろした。
私は死んだ。いつものように、それは冷たく、暗く、そして退屈なものだった。