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【旧リメイク前】三人の異世界転生者と時渡りの予言の姫巫女~刻々のティアドロップ~  作者: 日華てまり
第1章 学園都市ぺスカアプランドル編

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18話 羨ましいなら変わってよ!

 



「それにしても、君の魔法のおかげで本当に助かったよ。最近、生徒が暴走する事件が多発していてね。……無理矢理気絶させないと止めることが出来なくて困っていたんだ」


 気を失ったジンガとフリージアを連れて、紫苑達は保健室へと移動した。

 エクレール先生に頭を下げられて、紫苑はぶんぶんと両手を振った。


「いやっ、たまたまです! 私の魔法が何なのか、分かってなかったし!」


「それでも、君のビンタくらいで済んで良かったよ。恐らく、君の魔法には精神干渉する力も備わっている。ジンガの精神に干渉することで、暴走を抑えられたのかもしれないからね」


「……ジンガは、どうなっちゃうんですか?」


「まぁ、無難に停学……かな。まずは親元へ送り返して、様子が落ち着くまで家族の元で見守ってもらうつもりだよ」


「家族のところに……」


 ジンガの記憶を覗いてしまった紫苑は、落ち着くまでの停学で良かったね、と素直に頷くことは出来なかった。

 記憶で見たあの家族が、暴走したジンガを許してくれるだろうか。


「はぁ……。少々厄介なことになりそうだ」


 ジンガの家族から連絡を受けたノレッジ先生が保健室の扉を叩く。何やら深いため息をついて、深刻な雰囲気でエクレール先生と話をしているノレッジ先生が、ベットで眠っているジンガをちらりと見つめた。


 紫苑の悪い予感は的中したようで、ジンガの家族は誰も迎えに来ないと言っているという話だった。


「……僕は、見放されたんだな」


 弱った身体をゆっくりと起こして、ジンガが今にも消えてしまいそうな弱々しい声で呟いた。


「…………ジンガ」


「……なんだ、僕を馬鹿にでもするつもりか? 名門だと、君達とは格が違うと言っておきながら、家族の中で一人だけ火属性にも選ばれずに、家族に捨てられた落ちこぼれだと、君達も笑うつもりなのか!」


 ジンガがそう言って立ち上がろうとすると、暴走の後遺症なのか足に力が入らなかったようで、身体を支えようとした腕が自身の体重を支えられずにジンガはベットから転がり落ちた。


「…………どうして、僕がこんなに惨めな思いをしなければならないんだ……」


 床に這いつくばったジンガが、悔しそうに顔を歪めた。


「ねぇ、ジンガ。ジンガは確かに嫌な奴だけど、ただの嫌な奴じゃないってわかったから……私は、ジンガを笑ったりしないよ」


 ジンガと目線を合わせるようにしゃがみこむと、紫苑は右手を差し出した。


「属性なんて、ただの個性でしょ。火属性じゃなくたって、水魔法だって素敵だもん。ジンガの魔力は本当に凄いし、それをコントロール出来たらきっと家族よりも凄い魔法が沢山使えるようになるよ! だって、ジンガは努力出来る人なんだもん!」


 キラキラと瞳を輝かせて、同情なんかじゃなく、本心からそう言っている紫苑はにっこりと太陽が咲くように微笑んだ。

 ジンガの表情が泣きそうな、(ほう)けたような表情に変わり、差し出された手をぱしんと払い除けた。


「君なんかに、何がわかる! ……僕が暴走した時、君は見たこともないような魔法をいくつも使っていたじゃないか! 君だって、心の中では僕を馬鹿にしているんだろう!?」


「だから、そんなこと思ってないって……!」


「お優しいふりか、星守紫苑! 特別な君は、慈悲の心まで持ち合わせているようで、本当に羨ましいよ!」


 バチン。


 紫苑が思いっきりジンガの頬をひっぱたいた。


「……っ、なにする」


「あんたの気持ちなんて、分かるわけないでしょ! 私はジンガじゃないんだから! ……でも、あんたが言う特別な魔法で見ちゃったんだもん。あんたの努力も、あんたの家族も見ちゃったんだもん。それなのに、馬鹿になんて出来るわけないでしょ!」


「何を意味のわからないことを……」


 ジンガに言われた『特別』という言葉が、紫苑の心を大きく揺らした。

 特別な魔法、それはきっと予言の子だから使えるんだろう。それは、紫苑にとって決して嬉しいだけのものではなかった。


 わくわくと不思議な世界に弾む気持ち以外を見ないふりをして、『特別』という言葉に感じる自分が主人公であるかのような高揚感に身を任せ、元の世界へもう二度と戻れないかもしれないという不安と恐怖を紫苑は一人で抱えていた。


 その不安を打ち明ける家族も、この世界には存在しないのだから。


「ジンガだって、私の気持ち知らない癖に……。羨ましいなら変わってよ! 私は、特別になんてなりたくなかった! 誰も知らない世界になんて来たくなかった! 世界を救うなんて、これからずっと危険と隣り合わせだなんて、考えないようにしてたけど怖いだけ。……私は、魔法も使えない平和な世界で守られていた、ただの女子高生なんだよ……」


 これは、お互いにただの八つ当たりだ。

 けれど、この世界にたった一人で放り込まれた紫苑にとって、ずっと蓋をしていた気持ちが溢れだしてしまうには十分だった。


 ぺたん、としゃがみこんだ紫苑が小さな声で呟いた。


「……帰りたい。元の世界に、帰りたい……」


 紫苑の瞳には薄らと涙が滲んでいた。




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