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【旧リメイク前】三人の異世界転生者と時渡りの予言の姫巫女~刻々のティアドロップ~  作者: 日華てまり
第1章 学園都市ぺスカアプランドル編

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9話 庶民と貴族

 



 教壇に上がったジンガが、魔法特性診断キットに魔力を込める。


 ジェイドと同じくらいの範囲に、ジンガ本人からは想像出来ないくらい綺麗な淡い水色の光が拡がっていく。

 スノードームの中で、水の球体が泡のようにふわふわと漂っている。


「なんだ。ジンガの魔法、綺麗じゃん」


 思わず紫苑はそう呟いていた。

 教壇の上に立ちすくむジンガを見ると、その表情は今にも死にそうなくらい青ざめていた。


「……馬鹿な、どうして……」


 ジンガが誰にも聞こえないような小声で洩らした。


「ショボイわけでもなかったし、ジェイドに自慢できるくらいの魔力量だったのに、なんであんなに真っ青になってるんだろう?」


「あー、私達みたいな庶民にはわからない感覚なんだけど、フラーウィス家は火属性のエリート一家なんだって」


「火属性って、家族全員が?」


「うん、ご先祖さまも皆火属性らしいよ。だから、攻撃力も高い火属性こそが至高だ! って思ってるから、反対属性の水属性は……ね」


 そういう事情があるなら、自分だけが火属性と相性の悪い水属性なんてことになったら、顔面蒼白にもなるというものだ。


 魔法に優劣は無い。そう思いながらも、一族の誇りなんて面倒なものに縛られているジンガに、ご愁傷様ですと紫苑は心の中で手を合わせた。


「……こんなこと、あっていいわけがない。父様や兄様になんて言われるか……」


 暗い表情でブツブツと自分の席へと戻っていくジンガを横目に、次々と様々な色の光や形状を見せていくクラスメイト達の魔法に、紫苑は瞳を輝かせていた。


「よし、これで全員の魔法特性診断が終了したかな。本日の僕の授業はここまでにしよう」


 エクレール先生の挨拶を合図に、生徒達がバラバラと帰路につく。


「ねぇ、授業も終わったことだし、学園都市を見て回ろうと思ってるんだけど、紫苑はこの後時間とかってある?」


「あるある! 私も一緒に行ってもいい?」


「勿論だよ! 私とジェイドは学園都市出身だから、少しは案内も出来ると思うよ!」


「そうなの? 授業で使う物とかも揃えたかったから、凄く助かるー!」


「えへへっ、任せてよ! って言っても、私達が住んでたのは住宅街だったから、学園近くのメイン通りはあんまり詳しくないんだけどね」


 フリージアの話では、学園都市には住宅街やお店で働く人用の施設がまとまっている住宅エリアと、学園の近くのお店やいろんな施設がまとまっているメイン通りがあるのだという。


 学園から出て、徒歩五分もかからないくらいで、カラフルなお店の並ぶ大通りへと出た。


「うわぁぁ、凄い! 街並みもカラフルでめっちゃ可愛いし、どのお店もお洒落!」


 学園と同様に季節が入り乱れているカラフルな花壇に、綺麗な色の蝶々が飛んでいる。


 ローファーを踏み鳴らすたびにコツコツと小気味よい音のなるレンガ造り道に紫苑の気分が上がっていく。

 ヴィンテージを感じる赤レンガやカラフルな壁が、行ったこともないのに、お洒落な街ニューヨークを彷彿とさせられた。


 全てに魔法が使われている街並みは、どこを見ても夢の国のようで、明るい時間なのに噴水の水はキラキラと光っていたり、レンガを踏むと街灯の色が変わったりと楽しい仕掛けが沢山あって目移りしてしまう。


「まぁ、住宅エリアの中だけでも普通に暮らせるからな。俺はあんまりこっちまで出てくることはなかったけど、こんなに魔法が使われているなんて凄いな」


「でしょでしょ! 可愛いお店も多いし、お小遣いを貯めて遊びに来たことはあっても全部は回れないし、ずっと憧れてたんだよね!」


「なんでフリージアが自慢げなんだ……」


「紫苑よりは私の方が詳しいからね! とは言っても結局のところ、この学園に通っている子は学園都市出身の子が多いかもね」


 フリージアがそう言うと、ジェイドが顎に手を当てて、何かを考える素振りをして言った。


「そうだな。そう考えるとフラーウィスは珍しいタイプだな」


「ジンガが?」


「あいつが家柄に拘るのも当たり前といえば当たり前なんだ。フラーウィス家は水中都市エストラルの由緒正しい貴族だから」


 貴族、という聞き慣れない言葉に、紫苑が眉をひそめた。


「貴族の子供とか、ある程度育ちのいい人なんかは、だいたい水中都市出身だからな。基本的にはそのまま水中都市にある学校に通うだろうし、わざわざ学園都市にまでくる人っていうのは、魔法に重きを置いてる家柄なんだ」


「あぁ見えて、血統書付きの本物のお坊ちゃんってことね。魔法重視で別の国に学びに来てるなんて、ジンガも意外と苦労してるのかな」


「まぁ、一々突っかかってくるのは辞めてもらいたいけどな」


 そう言って、ジェイドは苦笑いをすると足元の小石を蹴飛ばした。


「わっ、と。びっくりしたぁ〜」


 ジェイドの蹴った小石が運悪く跳ね上がって、前から歩いてきた女の子の足に当たってしまった。




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