限られた時間
「ずっと好きでした! 俺と付き合ってください!」
俺はこの数年間ずっと彼女に惚れていた。しかし、見た目に自信がなく心にも勇気のない俺は告白なんかしても無駄だと思って諦めていた。
そしたら何故今告白してるのか?それはここに俺と彼女しか居ないからだ。話しかけられて、舞い上がり、勢いで告白。考えなしの馬鹿だ。
「あの、よろしくお願いします」
幻聴か?彼女の声で了承された、OKをもらえたような?え?本当に?
「俺と付き合ってくれるのか!」
「は、はい。その私も前からあなたのことを、その……」
「やったぁ! これからよろしく」
「そんなに喜ばれるとなんだか恥ずかしいです」
彼女の動作1つ1つが、可愛らしくて愛おしくてしょうがない。付き合えるだなんて幸せ過ぎてどうにかなりそうだ。
「さ、早速だけどさ。デートしながら帰ろうか?」
「そうですね。私もお話しながら帰りたいです」
学校から出て街の中を歩きながら、彼女の好きなものや最近ハマっていることなどについて話しながら帰る。話を聞くと趣味なども俺と合っていて2人して会話が弾んだ。
彼女は思っていた通りの人だった。明るくて、どこかお茶目な一面かありながらもたまに少しドジというか、ぬけている。とても身近に感じさせられて、付き合って数時間なのに昔からこんな感じだったのでは?と錯覚してついつい揶揄ってしまい、彼女は可愛く少し怒る。
はぁ、幸せだな。
「さっきから私のミスを笑い過ぎだよ、もう」
「ごめん、ごめん。でも可愛いミスなんだから良いじゃん?」
「こうなったら、えい!」
「わ! ちょっと前見えないって」
彼女が後ろから手で目隠しをしてきた。真っ暗で何も見えない。
「悪かったからやめてくれ、何も見えないよ、その可愛い顔を見せてくださいお願いします!」
あれ?返事がない。
「えっと、本当にごめん。だからそろそろこの手を退けてくれないかな? 真っ暗で何も見えないから歩けないし」
返事が待っていても返ってこないことに、なぜか不安になる。
「頼む! 何か返事をしてくれ!」
「ねぇ? 今日学校で何かした?」
「え?」
唐突な彼女の質問に理解不能になる。
「今日私以外と話した? 会った? 帰り道いつもと同じ? そもそも私とあなたってなんであの場に2人っきりだったの?」
次から次へと質問される内容に俺は答えられない。なんでだ……。
「目隠ししてるけど、手でやってるだけでそんなに真っ暗になるの?」
そうだ、指の隙間からの光すら見えてない。
「そろそろ時間だね」
なんの?
「おはよう」
俺は勢いよく起き上がる。そこは俺の部屋であり、今はベッドの上に……。あはは、そうだよな夢だよな。俺が彼女に告白できるわけないじゃん。
こうして俺の幸せな時間は終わった。