表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
押しかけメイドの距離感がバグっている件  作者: 蒼田
第1章 入学前の来訪者
21/73

第21話 実は二人っきりのマンション

 一先ずの所落ち着いた俺は勉強を再開し一心不乱(いっしんふらん)にメモを取る。

 サキの誘惑に(さら)されながらも平常心をできるだけ(たも)ちつつペンを走らせ、そして――。


「一先ず今日の所はこの辺にしておきましょう」

「……了解」


 ペンで汚れた教材を閉じて天井を見る。

 片付ける音をBGMにゴロンと寝ころぶ。


「床に転がっていたら汚いですよ? 」

「カーペットだから大丈夫だろう? 」

「いえそうとも限りません」


 注意され体を起こす。

 いつの間にか片付け終わったサキが掃除機を手に取っていた。


「? 掃除? この前やらなかったか? 」


 そういうと盛大(せいだい)に溜息をつかれた。


「掃除は毎日するのが当たり前です。ほら堕落(だらく)したご主人様、略して駄神(だしん)様。起きて手伝ってください」

「はいよ」


 返事をして腰を上げる。

 机を除け窓を開けサキが掃除機をかけるのを手伝った。


 メイドと掃除機。

 サキが掃除をしている。何て健全(けんぜん)なメイドの姿なんだ。

 これが本当のあるべきメイドではないだろうか!


 その素晴らしき姿に「うんうん」と頷く。メイドと言えば洗濯に家事掃除だろう。

 本来漫才やランニングの付き添い、入浴補助に家庭教師は違うと思う。

 あるべき姿に少し感動しつつ様子を見る。


 ヴォォォォンと鳴り響く掃除機の音。

 そして手持ち無沙汰(ぶさた)の俺。


 ……。


 罪悪感っ! 圧倒的罪悪感!


 え、なにこれ。俺が悪いのか? なにもしていない俺が悪いのか?

 悪い事をしていないのに、本来あるべき姿なのにとても気まずい。


 汗を()らして様子を見た。

 いや俺が主人で彼女がメイド。これで間違っていない。そうそのはずだ!

 心の中でそう自己暗示をかけている間に掃除機の音が消えた。


「机を戻していいか? 」

「よろしくお願いします」


 自分に仕事が出来たおかげか居づらさを(やわ)らぐ。

 自分の部屋なのに居づらさを感じるという不可思議な現象に戸惑いながらも一先ず行動。

 俺は机を動かしサキは俺の掃除機を元の位置に動かした。


「さてと……ってちょっと待て! 」

「? 如何なさいましたか? 」

「なんで俺の服が入った(かご)を持っている?! 」

「これから洗濯を行いますので」

「だろうけどっ! その……パ、パンツ! 」

「私のを見たいのですか? ご主人様」

「それは見て見たいが……って違う! 俺のパンツがあるから俺がやる! 」

「いいえ。これは私が入念(にゅうねん)に洗いましょう! 」

「しなくていい! てかはずい! 」


 俺が言うとサキは目線を落として籠を見た。


「まじまじと見るな!! 」

「顔を赤くして可愛らしいですね。バブみ様」

「お前には羞恥(しゅうち)心というものがないのか?! 」

「ありますとも。しかしながら婚約者のパンツ(ごと)きで顔を赤らめていたら妻にはなれませんので」

「確かにそうだろうけれどもっ! 」

内心(ないしん)ご主人様のパンツがボクサーでよかったと安堵(あんど)している私がいます」

「いや何で?! 」

「私はブリーフ派ではなくボクサーパンツ派ですから!!! 」

堂々(どうどう)と言うな! 」


 俺がツッコむとやれやれと言った感じで横に首を振った。


「たかがパンツ。されどパンツ。パンツ一つにとっても妻の好みに合っているというのは重要なことですよ? 」

「それはそうかもしれないが」

「いえ、婚約者様は分かっておりません。こと夜の一戦を(まじ)える時。お相手が好みの下着でない時のげんなり感!!! そこから始まるレス! 最悪不倫(ふりん)に繋がるかもしれません!!! 」

「そ、そうなのか」

「ええ。なので「安堵している」と言う訳でございます」


 そう言いながらベットを踏み台に窓の外へ足を向けている。


「ってちょっと待て! はぐらされた感じがあるが、それと俺の服を洗うのは全然違うだろ?! 」


 俺が言うと窓の外から振り返りサキは大きく溜息をついた。


「私はともゆき様のメイドですので。家事(かじ)は私の領分(りょうぶん)です」


 ……そうでしたね。


 サキに完全に言いくるめられた俺は少し不貞(ふて)(くさ)れた感じでベットに座る。

 サキが窓から入ってきて俺の斜め前に陣取った。

 かすかにガタンゴトンと音がする。

 どうやら洗濯機に洗い物を入れ終わったようだ。


 ......。


 気まずっ!

 この静寂(せいじゃく)気まずっ!


 気まずさに押し負け天井を見る。

 あぁ……和む。

 そうだ!


「サキ。お前の部屋を掃除してやろうか? 」


 と少し悪い顔を作って彼女に言った。


遠慮(えんりょ)しておきます」

遠慮(えんりょ)しなくていいんだぞ? 俺の部屋をやってもらったんだから」

「私の部屋は常に綺麗な状態が維持されておりますのでお気になさらず」


 俺の事で手がいっぱいなはずなのに……。それはそれで気になる。


「いや。やってもらったんだ。お返しをするのは普通だろ? 」

「ご主人様。プライバシーというものをご存じで? 」

「……あぁ知ってる。俺が常に侵害されて、侵害しているサキが一番主張してはいけない権利だとうことは」

「あれはご主人様の為でございます。より良い快適(かいてき)な生活をお送りするために必要なこと。仕方のない事なのです。しかし私の場合は異なります。私には私のプライバシーがございますので()えて主張させていただきます! 」

「おおっと。まさかのジャイアニズム。自分が侵害するには良くて相手を侵害するのは良いと? 」


 そう言うと顎に手をやり考える素振りをした。


「いえ。少し違います」

「ほうぅ」

「ともゆき様だからこそ、過去の黒歴史から大学受験に落ちた経緯(けいい)、ほくろの数から将来のフェチまで網羅(もうら)するのです!!! そこに『他者』は含まれません」

「まさかの未来予知! 」

「今はメイド・バニー・(しま)パンがともゆき様の中でブームの様ですが……。むむっ! これはっ! 」

「ゴクリ」

「……まさか……まさか! 」

「な、なにをみたんだ?! 」

「……残念です。ご主人様。ご主人様の毛根(もうこん)は――」

「いやぁぁぁぁ!!! って関係ねぇ!!! 」

「あ、気付きました? 」

「気付くわっ! てか何気に未来視をするな! 」

「私の未来視は、それはよく当たると好評(こうひょう)なのですが」

「なお悪いわ!!! 」


 ツッコミを入れながらベットから降りる。

 机まで行きサキを見上げた。


「しかし本当にサキの部屋は大丈夫なのか? 」

「大丈夫でございます」

「いや物理的にどうなのよ? どう考えても人手も時間も足りてないだろ? 」

「確かに時間はあまりありませんが、夜に(おこな)っています」

「掃除の音が聞こえてきた覚えがないのだが……」

「このマンションの防音設備は素晴らしいですね。改築(かいちく)した甲斐(かい)があります」

「ちょっと待て」


 今聞き捨てならないことを聞いた気がする。


「改築? なにをやらかした? 」


 手を突き出して彼女に聞く。


「簡単なことでございます。ともゆき様がこのマンションに来る前にマンション全体に防音設備を入れたまで」

「それ他の住民は理解したのか? 」

「理解、というよりもこのマンション。現在住んでいるのは私とともゆき様のみでございますよ? 」


 え、何それ恐ろしい。


「ま、まさか、強制退去(たいきょ)?! 」

「いえ。単純に……。あ、いえ。この話は止めておきましょう」

「止められると逆に気になるんだが?! 」

「……世の中知らない方が良い事があるのですよ」


 それを聞きズズっと少し後退した。


「ん? そう言えばサキはこの前引っ越したんだよな? 」

「ええ。その通りでございます」

「ということは俺はその間このマンションに一人で住んでいたということになる」

「はい」

「まさかと思うがこのマンション。盗聴とか――」

「お昼の下準備を始めましょう」


 分かりやすいほどあからさまに話を逸らされた。

ここまで如何だったでしょうか?


面白かった、続きが気になるなど少しでも思って頂けたら、是非ブックマークへの登録や広告下にある★評価をぽちっとよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
こちらメイドもののラブコメになります。もしよろしければ!
麗しのメイド様がラブコメを押し付けてくる件
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ