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押しかけメイドの距離感がバグっている件  作者: 蒼田
第1章 入学前の来訪者
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第13話 秘密がいっぱいなメイドスカート

 市電から降り少し歩いて店に着く。

 ここは——この町に少ない大型ショッピングモール。色んなものが揃っているがその分少し(わり)(だか)な店である。

 普通食料ならばスーパーか、激安を狙って業務用スーパーに行くか。はたまた手ごろさを狙ってコンビニに行くかだ。


 しかし今回はここに来た。

 サキの服の事もあるが一緒に買いたいものが多いからだ。往復(おうふく)運賃(うんちん)とかを考えているとあちこち行くよりもこっちの方が安上がりで。

 それに市電から近く交通の便(べん)がいい。


「……もっと安くするなら自転車が必要だな」

「車ではないのですか? 確か免許をお持ちと記憶しているのですが」

「どこから情報を得ているのかかなり気なるが……。車の清掃に車検(しゃけん)や整備費。これらを考えると買う気にはならないな。どこか遠くへ行くにしても精々(せいぜい)レンタカーくらいだろうな」


 サキの言葉に返事しながら入り口を通る。

 広く清潔な空気が俺達を迎えるが、それと同時におかしなものを見る目線が俺達に降り注ぐ。

 ここに来るまでに同じような目線を浴びてきた。

 恥ずかしくはあるものの若干慣れて来た自分が嫌になる。


 まずはサキの服ということで地図を確認。


「二階か」

「エスカレーターはあちらですね」


 そう言いサキが俺を誘導。


「なぁ……。まだこれを続けるのか? 」

「ええ。迷子になられてはいけないので」

「流石にならんだろ」

「それは分かりません。ちょっとした(すき)に迷子になられるかもしれませんし。それにご主人様が迷子になられた場合、この仕事初の迷子センターを使用するようなことになるかもしれません」

「なんでその選択?! 普通に探してくれ。あ、いや迷わないが」

「怪しいですね。高知に来て迷ったことは多いはず。それに小学校の頃など何度も教員のお世話になったと記憶しておりますが」

「本当に何でそれを知っている?! 本当に謎な情報源だな……」

「お褒めに預かり光栄です。さて(まい)ご主人様。人生の迷子にもなっているご主人様。こういった理由から私は手を握る必要があります。ほんのわずかな隙に迷子になりコールセンターを使うという恥ずかしいことはさせないでくださいね? 」

「メイド服でショッピングモールを闊歩(かっぽ)するサキにだけは言われたくねぇ」


 げんなりしているとエスカレーターが二階に到着した。

 少し歩いて周りを見る。様々な店が立ち並ぶこの一角で目的の店を見つけようと目を凝らす。

 これは地図を見た方が早いな、と思い地図が張ってある場所へ移動しファッション店を見つけて、俺達は行く。


「いらっしゃ……いませ? 」

「いや疑問形で言われても」


 気持ちは分かるが。


「申し訳ありませんが、と、当店ではメイド服は扱っていないのですが……」


 と困惑しながら店員が言った。

 困惑と一緒に驚きやら奇妙(きみょう)なものをみるような目線を感じるのはきっと気のせいではないだろう。


「勘違いされているようですがこれは俺の趣味ではないです」

「そ、そうな……「え? なにを言うのですか? ご主人様の趣味だと思いますが」」

「確かに趣味だけれど……、って違う! 流石に女性にメイド服を着させて外に出させる趣味はないです! 」

「え? しかし今日、こうして……」

「ちょっと黙れ。話がややこしくなる。そして「やっぱり」と呟いた店員出てこいや! 」


 俺がそう言うと遠くの店員が一目散(いちもくさん)に逃げるのが見えた。

 サキが言ってることは事実だが、時と場合を考えないと誤解をまねかねない。例えばそう今の様に。


 俺に声をかけたが最後。

 目の前にいる女店員さんに同僚(どうりょう)(おぼ)しき人から同情(どうじょう)の目線が注がれていた。

 初見(しょけん)なのに「迷惑客」扱い。泣きたくなる。


「泣いていいのですよ。バブみを(ほっ)するご主人様。(りゃく)してバブみ様」

「もう原型をとどめていねぇ。ここまでくると「様」はいらないんじゃないか? 」

「いえいえご主人様は私の(いじ)り……いえ尊敬……いえ敬愛(けいあい)する方でございますので「様」は必須でございます」

「今(いじ)り対象って言おうとしたな?! 」

「はて。なんことやら」


 そう言い放ち彼女は店員の方へ向かっていった。

 俺を置いてすぐに店員と話し出す。女店員は口早に放たれる彼女の言葉に戸惑いながらも要点(ようてん)(つか)み服を用意しているようだ。


 店員すげー。

 俺とサキのやり取りを聞いているにもかかわらず普通に接している店員さんすげー。

 これがプロフェッショナルと言うやつか!

 プロフェッショナルはプロフェッショナルでもサキとは違う。

 確かに彼女は万能だろう。妙なメイド技術を使ってなんでもやる。しかし「メイド」という(わく)を超えて好き勝手するサキと比べると、あそこまで「店員」の役割を示す女店員さんは尊敬に(あたい)するな。

 

 しかし……なんて従者だ。

 昨日から思ったが彼女の手の平で踊らされ、常に弄り倒されている気がする。

 このまま結婚したら尻に()かれる未来しか見えない。


 そうこう考えているうちに店員さんが服を何着か用意しサキは試着室へ入っていった。

 すると奥の方から男店員がやってきて声をかけてくる。


「すごいね」

「あ、いや……。まぁ色々な意味で」

「ははっ。確かに。服装はメイド服だけど息の合った夫婦みたいなやり取りだったよ」


 そのメイド。婚約者です!


 茶髪の少し背の高い男店員フレンドリーに声をかけてくる。

 彼女の事を褒めつつも指摘(してき)的確(てきかく)で。

 少し顔を引くつかせながらも店員の声に耳を傾けた。

 するとにこりと笑みを浮かべながら数枚服を取り出しこちらに向ける。


「そんなお似合いカップルにこっちの服はどうかな? 」


 こちらに見せた服装は派手(はで)過ぎず、地味(じみ)過ぎずといったところだった。

 しかし持っているのは羽織(はお)るものだけ。


「春だけどすぐに梅雨(つゆ)がやって来る。そしてその向こうは夏だ。店としてはインナーもつけたいところだけど見た所上等なものを着ているみたいだからね」


 なにこのイケメン的確過ぎる。

 自然と俺の財布が開いてしまった。

 俺の会計を済ませてイケメン店員や女店員と話していると「シャー」っと音が聞こえた。

 どうやらサキの着替えが終わったらしい。

 三人でそっちを見ると——


如何(いかが)でしょうか? 」

「「「いやなんで?!!! 」」」


 そこにいたのは水着(ビキニ)を来たサキだった。


「え? 店員さん。ビキニを渡したの?! 」

「い、いえ。そんなはずは」

「というよりもこの店水着類は扱っていないんだけど?! 」


 驚いて彼女を見ている間もくるりと回って白い肌を俺に見せる。

 愕然(がくぜん)とする店員二人を後にして手を後ろにポージングを決めるサキに近付いた。


「服を買いに来たはずなんだが」

「水着も服ですね」

「夏のな! 」

破廉恥(はれんち)ですね」

「着ている本人がそれをいう?! というかこの水着は一体どこから」

「持ってきた物の中から」

「……手ぶらだったよな? 」

「……メイドのスカートは秘密でいっぱいなのです」


 そう言われると仕組みが気になる!

 が聞いたら泥沼(どろぬま)にはまりそうなので気付いたことを聞く。


「で受け取った服は? 」

「こちらに」

「あら綺麗に(たた)んで。って違うわい! なんで着ないの?! 」

「少し……冒険してみようかと」

「冒険しすぎだぁ! 」


 はぁはぁ、と息を荒げて溜息をつく。


「ま、まぁいい。サキがどこででも予想外の行動をとるというのはよくわかった。着替え直せ」

「えぇ……」

「俺はむしろその反応に驚くわ! いいから次! 」


 分かりました、という声を聞いて俺は閉まった試着室を後にした。

 サキが服を隠し持っていたことを素直に謝る。

 流石に非常識すぎるからな。

 店員さん二人は顔を引き()らせながらも「大変だね」とだけ言い許してくれた。

 親切で優しい店員さんに少し涙しながらもサキが着替え終わる時間を待つ。


「着替え終わったみたいだね」


 カーテンの音が鳴るとイケメン店員が言う。

 彼の言葉を受けて俺達は試着室を見た。

 するとそこには——


「これでどうでしょうか? 」

「「「いやだからなんで! 」」」


 縞々(しましま)水着(ビキニ)を着たサキがいた。

 またもやくるりと回るサキに俺は近づきどういうことか説明を求めた。


「着替えろとおっしゃったので、ご主人様の趣味に合うように、着替えました」

「なんで横縞(よこじま)?! 」

「以前見た資料では横縞の比率が多かったので」

「そ、そういうことか。だがなんでまたビキニ? 」

「着替えろとおっしゃったので」

「いやビキニじゃなくて普通の服に着替えてくれと言ったんだ! 」

「これはとんだ勘違いをっ! 」

「いやほんとにな! 」

「ビキニ一択のエンターテインメントには限界がありましたかっ! こうなるのであればバニーを持ってくるべきでした! 」

「サキの中の普通って何? 」


 大きく溜息を吐いて、受け取ったであろう服を指さし、今度は彼女が変な解釈(かいしゃく)を入れないように着替えてもらった。

 彼女は本当に渋々と言った感じでカーテンを閉めて、俺は背を向け離れようとする。

 だがサキはカーテンを一瞬で開けて「出来ました」と声をかけてきた。その素早さにドキリとしつつも振り返る。


 そこには——美女がいた。


「なに涙しているのですか? ご主人様」

「……綺麗だ」

「え? 」

「あ、いや何でもない。店員さん」

「ご主人様今何と——「はぁい」」


 すぐに店員さんを呼んで会計をしてもらう。

 話を聞こうとするホットパンツの彼女を無視して財布からお金を。

 店員二人に見送られながらTシャツにパーカーを羽織った彼女を連れて店を出た。

ここまで如何だったでしょうか?


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