第10話 おはようございます。ご主人様
「おはようございます。ご主人様」
太陽の光を浴びながら俺は目を覚ました。
ベットの隣の窓を開けたのか大量の光が差し込み俺を苦しめる。
んん、っと唸り腕で光を遮りながら体を起こす。するとどこからかいい匂いが漂ってきた。
「おはよう」
「おはようございます。朝食の準備が出来ました。お支度のほどを」
「ああ。だが一つ聞いていいか? 」
体を横に向けてメイド服の美女を見上げる。
彼女が頷くので俺は率直な疑問をぶつけた。
「鍵を閉めていたはずなんだがどうやって入ったんだ? 」
「メイドに不可能はありません」
「セキュリティー!!! せっかくセキュリティーの良い所に住んだのにこれじゃダメだろ!!! 」
「安心してください。私はご主人様を害する者ではないので」
「いや。それでも普通にダメだろ?! 犯罪だぁ。せめて扉をノックしてから入ってくれ! 」
「それだと朝食の準備や朝の洗濯などが出来ないので」
「確かにそうだな。って違う!!! それは俺がやるから! せめて日中だけにしてくれ! 」
そう言いながら肩を掴む。
「……ひゃん」
「わざとらし……」
「わざとらしいなんて。昨日会ったばかりのご主人様が私の事を分かっているので? 」
「少なくとも昨日の感じから今の言葉が出るなんて思わないよ」
「そうですね。演技が過ぎました」
やっぱりな、と思いながらも完全に起きる。ベットから出て軽く溜息。
サキの方を向いて一言。
「頼むから不法侵入はやめてくれ。心臓に悪いし、勘違いして警察を呼びかねない」
「それは不可能でございます」
「この前「メイドに不可能はない」とか言ってなかったか? 」
「細かいことは良いのです。しかしともゆき様を起こすのは私の仕事。譲るわけには行けません」
「いや自分で起きれるから」
「今さっきまで寝ていたご主人様が何を」
言い返せねぇ。
「ま、まだ大学に入っていないんだからいいだろ? 」
「いけません。ともゆき様には健康的に成長して頂かないと」
「サキは俺の母ちゃんか! 」
「バブみをご所望で? 」
腕を横に広げて「さぁおいで」とポーズをする。
「……ふっ」
「……どこか不快な笑い方ですね」
そうでもない、と言い目じりが下がった先から目を逸らす。
目線を戻すと腕を戻してサキが俺を睨んできていた。
一応謝っておこう。
「悪かったな」
「なんですかその詫びる気のない謝罪は。謝罪会見の時に炎上しますよ」
「問題を起こす前提かよ! 」
「先日の、お風呂の期待した目を見ると言い訳は出来ないかと」
「くっ! 」
確かに昨日は酒が入っていたせいか、少し欲望に忠実な態度を取ってしまった。
だが考えて欲しい。俺は健全な男性だ。無論人によるかもしれないが、美女の裸に興味がないと言ったらそれはそれで問題ではないだろうか?
「では私の、私による、私の為のお世話にご理解いただけたようで。まずお食事を」
「……それ結局自分の為って言ってないか? 」
呆れながらも早朝から不法侵入者の相手をし湯気立つ机に向かった。
食事も後半。ズズっと味噌汁を飲んで机に置く。
そしてサキに聞く。
「サキ。今日お前の用事は? 」
「駄目駄目ご主人様のお世話でございます」
「駄目駄目って……。まぁいい。俺は大学に行くのにもう少し揃えるものがあるから家を空けるけど、どうする? 」
そう言うとサキはカタリと箸置いて俺の方を向いた。
「愚問ですね。もちろんついて行きます」
「……いや家で待機しているというのも――」
そう思ったが、言い留まる。
サキを家に置いて外に出たらまずい気がする。
サキの事だ。恐らく自分の部屋ではなく俺の部屋にいるだろう。
もし仮に締め出して家を出たとしても妙なメイド技術で侵入することが考えられる。
家事だけならまだしも昨日の行動を見ていると、知らない間に俺の部屋を模様替えしていても不思議ではない。いやむしろ俺がいない事を良い事に何か部屋に仕込む可能性は大いに有り得る。
ならば一層の事連れて行った方が良いんじゃないか?
だがサキだ。非常識で超絶美人な天道・イリステリア・サキだ。
本来ならば喜ぶところなのだろうがこと外に出てしまってはその注目度は計り知れない。
不遇にも俺はこれからこの顔面偏差値が非常に高いメイドと行動を共にしなければならない。普通な男性である俺からすれば不釣り合いこの上ない。これが常識的な人ならば喜んでお迎えするのだが、彼女は非常識な行動をとるメイド。加えるのならば何をしでかすかわからない歩く危険物。
デメリットが大きい。
しかし……。ものは考えよう、か。
今のうちに「超絶美人なサキと一緒にいること」を普通の事と周りにアピールしていると良いのではないだろうか?
町でこれが普通であると認識されれば——少なくとも大学に行っている間、騒ぎはそこまで大きくならないはず。
よし! これで行こう!
「終わりましたか? 」
とサキが無表情で聞いて来る。
「……本当に心を読まれているかのようなタイミングで聞いて来るな」
「ともゆき様は顔に出やすいのです。読心術を使うまでもなく手に取るように考えていることが分かります」
「え……。そんなに分かりやすい? 」
「それはもう。犬レベルですね」
「犬?! 」
基準がわからん!
「本来ならば言葉を介することが出来ないのにその心情を代弁することができる飼い主の気分です」
「それ読めてないよな?! 本当の意味で読めてないよな! 」
「いえいえそのようなことは……、ありますね」
「あるのかよ! 」
「ですが読めない時の為の読心術」
「いや勝手に人の心を読むなよ! 」
「勝手には人の心は読んでいません。私が読むのは敵対する相手とご主人様のみですので」
「なお悪いわ! 」
サキが表情を変えずそう言う。
いやあれか。サキは読心術を使われないためにこうして無表情をキメているのかもしてない。
読心術。自分が使う分には良いが、読まれたくないと。
な、なんて質の悪い奴だ。
少し引きながらも「コホン」と軽く咳払いする。
「まぁ……良くはないが仕方ない」
「ご理解いただけたようで何よりです」
「で外出の事だがついて来るという話だったが、ついてきても大丈夫だ」
そう言うとサキは「ありがとうございます」とだけ言い席を立った。
彼女は手早く食器を片付け俺に言う。
「これから少し準備をしてきます。今から三十分後、マンション下でお待ちください」
俺が「了解」というと消えるように彼女はこの部屋を出ていった。
ここまで如何だったでしょうか?
面白かった、続きが気になるなど少しでも思って頂けたら、是非ブックマークへの登録や広告下にある★評価をぽちっとよろしくお願いします。




