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プロローグ 我が家は一夫多妻制

「じゃあ行ってくるね、

次の遠征先は近いからすぐに帰ってくるよ。

お土産は何がいい?」


「あら、わたしに気を遣わなくてもいいのよ?

遠征先(向こう)の奥さんと子どもとゆっくりして来たら?」


「なんでそういう事いうんだよ~」


「お前に妻がわんさかおるからやろがっ!!」


「でも本妻はキミだけなんだよ~っ!」


「黙れあほんだらっ!

さっさと離婚届けに判を押さんかいっっ」


「わあっ出た!カンサイ州弁!」


「やかましいわっ」



こんなやり取りがここ数ヶ月、

わたしと旦那の間で繰り広げられている。



ウチの旦那は王宮精霊騎士団所属の

精霊騎士だ。


精霊騎士というのは

生まれつき精霊を操る力を持つ者が

その剣に契約した精霊の力を宿して

戦う騎士の事だ。


旦那の契約精霊は炎。


カッコつけて言うと炎の精霊騎士だ。



この国、クルシオ王国では

結婚は王族以外は一夫一婦制だが、


数々の武勲や様々な業績を残した有能な者には

一夫多妻制が認められている。


要するに優秀な遺伝子をばら撒いて、

優秀な子孫を増やせ、という事だ。


ウチの旦那も精霊騎士として数々の武勲を上げた

勇者らしく、

わりと早い(若い)段階から

一夫多妻を許されていたらしい。



グレーベージュの髪色に黒曜石の瞳を持つ旦那は

長身で引き締まった筋肉を身に纏う

恵まれた体躯で、

10人いれば10人が認めるほどの美形だった。



そんな男が当然モテないわけはなく……


魔物が大量発生して、

その討伐に向かう遠征先ごとに

どんどん妻が増えていった、らしい。


一体旦那に何人の妻がいるのか、

わたしにはわからない。


だってわたしと結婚した時には既に、

旦那には複数人妻がいたはずだから。


わたしはそれを知らずに結婚した。


妻の中には当然子を産んだ人もいるらしく、

前に一度、王都の我が家を訪ねて来て

旦那と同じく黒い瞳をした幼な子を

これ見よがしにわたしに自慢してきた女もいた。


旦那の子を産んだ自分こそが

本妻に相応しく、子どもが可哀想だと思うなら

とっとと別れろと言ってきた。


後から出て来てちゃっかり本妻に

収まるなんて図々しいとまで言われた。



その時丁度旦那は遠征中で留守をしていて、

旦那が帰ってくるまでわたしは泣き通しだった。


でも五日後、旦那が帰って来た時には

不思議と心が凪いでいて、

その日わたしは初めて旦那に離婚を願い出た。


わたしから離婚の意思と、

子どもと何番目かの奥さんが訪ねて来た事を話すと、

旦那は泣いてわたしに縋った。


遠征先の妻は皆、

魔物に夫を殺された未亡人ばかりで、

生活の面倒を見ているだけの

本当の妻ではないという。


英雄騎士の妻というだけで

様々な恩恵を受けられるので、

子どもが成人するまではと

戸籍上の妻にしているだけだと。


でも……どうしてそんな話を鵜呑みに出来る?


この国では黒い瞳はかなり珍しい。


旦那を含めて一人か二人、いるだけだという。


そんな珍しい瞳を持つ子と、

遠征先の小さな町でたまたま偶然親子になっただけだと誰が信じられようか。


それに……

旦那とキスしてる魔力念写(写真)

ご丁寧に送ってくれる妻もいるしね。



それから旦那がわたしと結婚するまで、

数々の浮名を流していたのを

わたしは知っているから。


実際に何人もの女と如何わしい宿屋に入って行く

姿も何度も見ている。


要するにわたしは旦那の下半身を

信用していないのだ。


そんな旦那が長い遠征中、

禁欲生活が出来るわけがない。


じゃあ何故結婚したんだと

言われればそれまでだが、

それにはそれで事情はあったりしたわけで……。


そうか、

わたしも旦那に憐れんで妻にされた一人だったのか。


それは……今まで考えた事もなかった。


だったらもう、


わたしを憐れむ必要はない。


わたしはちゃんと立ち直ったし、


術式師という職にも就いている。


一人でも十分に生きてゆける。



だからもう別れたい。



不覚にも旦那の事を愛してしまっているから。



だから自由に

妻から妻へと渡り歩く旦那のそばにはいたくない。


この王都の小さな家で、


ただ旦那を待つ生活を送り続けたくはないのだ。



だからわたしは何がなんでも離婚してやる。


いざとなったら離婚届けだけを残して

この家から出て行ってやる。



だから旦那よ……


どうかわたしと、


もう離婚してください!



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― 新着の感想 ―
[一言] アルファポリス版を拝読していました! なろう版はラストが変わるということなので、 連載を楽しみにしています。 (ちょっと最後悲しかったので…)
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