2-1 夢が醒めないのですが
チュンチュン、どこからか鳥の鳴き声がする。
西洋風の設定なのに、この鳴き声、どう考えても雀。
製作者サイド、手を抜いたな・・・
「ジュリア、朝ごはんよ~」
「はーい」
いつものやり取りに、のっそりと体を起こす、
箪笥を見ると服が一つ。
今着ているネグリジェのパジャマと合わせると、
服が二つしかない事になる。
まあ、着せ替え機能のあるゲームじゃないし、
冒険するようになれば装備でバリエーション増えるし、
あまり考えないようにしよう。
そう思いながら、唯一の服に手を通す。
薄いグリーンの膝丈、長袖のワンピース、
襟にだけ少しレースがついていて、庶民の服ではない事が分かる。
庶民は家名がないので、アーノルドと言う名字が付いている事でも
分かるように、一応貴族。
一応と言うのは、父が亡くなってから落ちぶれており、
借金こそないものの、ぎりぎりの生活を送っているのだ。
昔は大きな豊な土地を支配する、名門貴族だったのだが、
今はその面影はどこにもない。
屋根裏部屋から、狭くて傾斜がキツイ階段を、
落ちないように気を付けながら降りる。
「おはよう」
「おはよう、いい天気ね」
食堂に着くと、三人の女性が笑顔で私を迎えてくれた、
一人は継母のローザ、二人は血の繋がりのない義姉、リリーナとケイト。
シンデレラがベースのゲームなので、お約束の家族構成だが、
ゲームでは家族仲はかなり良い、末の娘の私は、いじめられるどころか、
でれでれに可愛がられている。
ゲームはあくまで男性の攻略がメインなので、いじめ設定は必要なかったらしい。