1-1 物語の始まり
月が煌々と光を放っている。
少し欠けただけで、ほぼ満月に近い月の光は、思いのほか眩しい。
一つしかない窓にはカーテンはなく、
直接月の光が部屋に差し込み、周りを照らしてくれる。
低い天井は奥に行くほど、傾斜があり、
ここが屋根裏部屋である事が分かる。
大きめのベッドが一つと、小さな机と椅子が一つ、
後は箪笥が一つあるだけの、殺風景な部屋。
ドアにドライフラワーで作ったレースが飾られており、
それだけが、場を和ませてくれている。
木の匂いと、少し埃っぽい感じ。
掃き掃除では、埃が舞うだけで、どんなに掃除しても、
この埃っぽさはなくならないのよね・・・
そんな事をベッドに横たわりながら、ボーと考える。
この部屋に時計はない、時計は高級品で、
大商人か大貴族、王宮ぐらいにしかないので当然だけど。
夜中は過ぎているけど、早朝にはまだ早い時間かな。
大体の見当をつけて、見慣れた部屋を見る。
見慣れた部屋・・・
そう考えて違和感を覚える。
私は日本の現役女子高校生、ぴちぴちのJKだ。
どう考えても私の部屋ではない。
しかし、私は冷静だった。
この部屋には見覚えがある。今私がハマっている、ポータブルゲーム、
「永遠の時のシンデレラ」の最初のシーンだ。
今4周目を攻略し終わって、5周目のプレイをしようと思っている所なので、
ハマりすぎて、夢でも見ているのだろう。