誤唱した呪文は不思議な世界の扉を開く
特になし
「あー、やっと魔法の授業終わりだ」
今日は週に1度の魔法の授業の日。90分間の授業で梢は疲れ切っていた。
「よし、早速帰ろう!」
公園まで来て、いつも通り呪文を唱えた。
「ふわぁ、眠たい…えーーっと、りゅんりゅんぱぱぱ?」
あくびをしながら梢は呪文を唱えた。
「え、ここどこ?」
梢がいた場所は桜駅のトイレ…ではなく見たこともない駅のホームだった。
「どこだろう、ここ?とりあえず出るか。」
梢は駅に改札口へ向かう。持っていた定期をかざすも何も反応しない。
「あれ?なんでだろう、というか私以外誰もいないじゃない。駅員さんもいないし。仕方ないから無理やり飛び越すか」
「一応外に出てきたけど…誰もいない…おーい、誰かーー!」
その時だった、向こう側からものすごい勢いで何かがやってくるのを梢は見た。
「きゃっ、誰?」
その、何かは梢の前で止まった。それはほうきにまたがった女の子だった。
「君、見たことない制服だけど…あー、わかった迷い込んじゃったんでしょ?私の事務所へ案内してあげる。あなたみたいに迷い込んじゃった子を帰す仕事をしているの。」
「あ、ありがとうございます」
「さ、私の手をしっかり握って。」
「?こうですか?」
「いくよー、りゅんりゅんぱぱぱ!」
「ここは?」
梢は目を開けると散らかった部屋にいた。
「さ、汚いけど座って。」
「あ、あの…」
「ん?どうした?」
「あなたはここで何を…?」
女の子はにこりと笑い答える。
「あなたみたいに迷い込んじゃった子を助けたり、人間たちの管理とか。」
「人間たちの管理って…」
「あなたも魔法使いだから知ってると思うけど、人間と魔法使いは違うの。人間みたいに魔法の使えないバカは私たちに管理されるべきなのよ。」
「そんなことしちゃダメだよ!」
「?どうした?」
女の子は首をかしげる。
「私だって人間だよ!管理なんてしちゃかわいそうだよ!」
人間という言葉を聞いて女の子の顔が変わる。
「帰そうと思ったけどそうはいかないみたいね。人間のくせに魔法が使えるやつがいたとは」
女の子は梢にゆっくりと近づく
「そ、そんな…来ないで!いやーー!」
「起きなさい!いつまで寝てんの?!」
「え、ハルさん?」
「もー、ほら、よだれ拭いて。もう。」
「あの子は?!」
「何寝ぼけたこと言ってんの。授業はもう終わったわよ。」
「うぅ、ハルさん、怖かったよぉ。」
「ちょっと!何泣いてんのよ!」
梢の涙が机を濡らす。
魔法の使い方を間違えちゃダメ