無用の心配
そして約束の日、俺は年長組の五人を連れて草原にいた。
「それじゃ、採取にかかるまえに少し休憩だ。」
「「「「「はい!」」」」」
一番年上のミェッタ、同い年のペイス、一つ下のビラン、そしてさらに二つ下のミニスとミオス。
五人が揃って返事をすると、各々が周囲に注意を払いながら、水分を補給する。
うん、事前の訓練がしっかり生きてるな。
年下達に教えた注意点に対し、しっかり行動出来ているのを満足気に見ていると、ジェミオ達の会話が聞こえてきた。
「なあ、今日は子供達に身近な危険を教えるのが目的だったよな?」
「そう聞いていたが、これは…」
「下手な見習いよりしっかりしてないか?」
「どうかしたのか?」
「ヴェル、お前年下達を全員冒険者にするつもりじゃないよな?」
三人の何とも言えない表情が気になり問いかけると、思ってもみなかった問いが返ってきた。
「そんな訳無いだろ。なんでそんなこと聞くんだ?」
訳の分からない確認をされたので、その理由を訊いてみる。
「子供達の行動が出来過ぎてるからだよ。」
「冒険者としてやっていくために必要な警戒や行動が、最低限とはいえここまで見事に身に付いてると、そうなのかって思っても仕方ないだろ。」
アルミーが困ったように、ジェミオが呆れたように答えをくれる。
ああ、そういうことか。
「お前、出来ても損じゃないとかそんな理由で年下達を仕込んだんだろう?」
先程の確認の理由に納得していると、フィオが顰めっ面で言った。
フィオの奴、何言ってるんだ?
「当たり前だろ? 一生町の外に一歩も出ないで暮らすなんて滅多に無いだろうし。最低限の警戒と緊急時の行動は身に付けておかないと困るだろう?」
例え戦闘をしない仕事をすることになっても、外へ出る際の注意事項や行動を知っていれば、護衛してもらう時の安全性と確実性はぐっと上がる。そうなれば当然、互いの生存率も上がるんだ。
昔、ギルド長に言われた「知らずに困ることがあっても、知っていて困ることは無い。」って、本当にその通りだと思う。
「確かにそうだが、お前たった三日で覚えさせたんだろう? もしギルド長が知ったら、頻繁に依頼が来るかも知れないぞ。」
ジェミオがいいのか?と訊いてくる。
森へ行く機会が減ることを心配してくれているのだろう。
「それならそれで放っておいても仕事が貰えるんだし、皆の安全が少しでも得られるなら構わないけどな。」
「お前が良いって言うなら、それで良いけどな。」
ジェミオがしょうがない奴といった様子で笑みを見せる。
正直、そんな心配は要らないと思う。
「まあ、多分そうそう依頼が来たりはしないと思うぞ。」
「ん? なんでだよ?」
昨日の事を思いだし、ぽつりと溢した俺の言葉にフィオが不思議そうに訊いてくる。
「昨日、ギルドでリェフ達に訓練内容を訊かれたんで、魔法演出有りの模擬訓練をほぼ三日やったって答えたら、思いっきり引かれた。」
「…それはそうだろうな。」
そう答えるとアルミーも引き吊った表情になり、ジェミオとフィオも頷いていた。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




