気遣い
町へ戻ってから四日が過ぎた。
その間、森へは足を運んでいないどころか、町から殆ど出ずにいた。
理由は単純で、司祭様から『実際に町の外へ出る際の基礎知識を指導して欲しい』とギルドへの依頼があり、それならば引率予定の俺が適任だろうとリーリィから依頼書を手渡しされたからだ。
態々ギルドを通して依頼しなくても、直接頼んでくれたら無償で指導しに行くつもりだが、司祭様はきちんと指導を受けるのであれば、それは教育という仕事を依頼するのだから、手順と報酬はきちんとしなければ駄目だと、頼み事をする時は毎回必ずギルドを通す。
『親しき仲にも礼儀あり』とか言ってたっけ。
そうやって司祭様が敢えて正規の依頼としての手続きをしてくれる事はギルドも解っているから、通常の依頼料より二割程安く受け付けて、俺やフィオみたいな出身者へと回してくるのが、ギルドの職員の間では暗黙の了解となっている。
ちなみに休養日に年長組を採取に連れて行くのは依頼ではなく、心配をかけたお詫びなので、無償労働となるのも暗黙の了解だ。
まあ、そんなわけで戻った翌日の休養日以降は孤児院に通ってたというわけだ。
そして事前教育の最終日の今日、ギルドへの完了報告も終え、いつもの食事処で夕食をとっているとリェフが声をかけてきた。
「ヴェルデ、子供達の指導は済んだのか?」
「ああ、周囲の警戒の仕方と、いざというときの対処法、あとは指揮者に従う事は徹底して教えてきた。」
「徹底してってことは、お前模擬訓練までしたのかよ。」
「いや、説明は初日だけで、昨日と今日は魔法演出有りの模擬訓練だな。年長組最初は固まって動けなかったけど、今日の訓練終える頃には大分動けるようになってたよ。」
俺が簡単に説明すると、リェフが頬を引きつらせた。
「…そりゃお前が魔法使った訓練って言ったら、実際の行動のまんまかそれ以上じゃねえか。」
リェフの言葉に、周りで聞いていた連中も頷いている。
「いざという時の為の訓練なんだから、出来るだけ実際と同じようにしないと意味ないだろ? 魔法だって鬣兎や鞭鼠、泥蛇なんかの小物の幻影出したくらいしかしてないし。俺としては、本物を生きたまま捕まえて来るくらいはしたかったけど、流石に不味いだろうと思って。」
「「「「「…、…、…。」」」」」
これでも多少は気を使ったんだと訴えると、リェフを始めとする周囲が沈黙した。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




