想う者
あの後、食堂に移動したがホリーに先に司祭様へ無事な顔を見せて来いと、直ぐに追い出された。
やけに強引に送り出された事が少しばかり気になったが、元々司祭様には一番に挨拶に行くつもりだったので深く考えるのは止めた。
司祭様の部屋を訪れ、顔を見せると、安堵の表情を浮かべて帰還を喜んでくれた。
そして、年下達に聞かせる話しでもないと『遮音』で結界を張ってから、竜王の事だけを伏せて、町を出てからの事、血の覚醒や従魔契約等、起きた事を全て話した。
「そんな事が…大変な事が起きていたんですね。それで、ヴェルデ。本当に身体は大丈夫なんですね?」
一通り話し終えると、司祭様は念を押すように訊いてきた。
「はい、大丈夫です。銀狼からの保証付きです。」
俺は頷いて答えた。
「それならば大丈夫なのでしょうが、いくら身体が頑強になったとは言っても、傷つく事もあれば、命を落とす事もあるのです。貴方自身を大切にしなさい。」
そう真剣な眼差しで告げられる司祭様の言葉が、今までに無い重さを持って聞こえる。
俺は無言のまま視線を落とした。
「ヴェルデ?」
司祭様が心配そうな声音で俺の名を呼んだ。
「…司祭様。俺…今まで…皆を心配させちゃいけない。…俺のする事に巻き込んじゃいけない。…ずっとそう思ってた。…フィオだって…本当に命が危ない時は、俺が助けるんだって…。」
「…」
ぽつぽつと話す俺の言葉を、司祭様は黙って聞いてくれた。
その事に安堵しながら、言葉を紡ぐ。
「でも、今回の事でフィオやジェミオやアルミーが教えてくれた。相手を思うことで抱える怖さも、想いも同じなんだって。解ってるつもりで、解ってなかった大事なこと。ゼーンはそんな俺でも一緒にいたいって、命を懸けて寄り添ってくれた。」
俯いていた顔を上げ、司祭様の瞳を見て告げる。
「俺は、俺を想ってくれる人たちの気持ちを絶対に裏切らない。どんな逆境にさらされたとしても、皆で生きて乗り越える事を諦めない。そう決めたんだ。」
俺の決意を聞いた司祭様は柔らかな眼差しを浮かべると嬉しそうに言った。
「そうですか。であれば、先程の心配も杞憂でしょう。」
そして司祭様は言葉を続ける。
「相手を想うは同じ。それならば、私も貴方を想う者の一人であると覚えていてください。そして何時でも頼って欲しい。共に立つことは想う者の喜びなのですから。」
「はい。ありがとうございます。」
俺は温かくすっきりとした気持ちで感謝を述べた。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




