感謝
ギルド長への帰還報告は、言葉のとおりあっという間だった。
部屋に入ると前回と同様にアルサドもいて、二人して無言で見つめてくる事に居心地の悪さを覚えたが、戻ったことを告げると雰囲気が一変し、無事だったことを喜ばれた。
そのうえ詳細な報告は明日で良いから、今日は帰って休めとまで言われてしまった。
なんとなく腑に落ちないながらも、部屋を出た後、ジェミオとアルミーの二人と分かれた。
そうして、まずは武器屋の親父さんに生還の報告とお礼に行く事にした。
◇ ◇ ◇
店に入るといつものように客は無く、奥で手入れをしている親父さんがいた。
親父さんはちらりと視線を向けたが、手入れの手を止めることはない。
そんないつも通りの反応にほっとしつつ、俺は無事戻ったことを告げた。
「ただいま、親父さん。」
「……。」
「親父さんが勧めてくれた剣のお陰で命拾いしたよ。」
親父さんは無言のままだが、気にせず言葉を続けた。
すると親父さんは再びちらりと視線を寄越して、何があったと問いかけてくる。
「森での依頼の最中に、血の覚醒が起きたんだ。」
俺の言葉に、親父さんの目に驚きが浮かぶ。
滅多に見る事の無い表情に俺は苦笑する。
「どうも竜の血を継いでたらしくて、死にかけたところをこの剣に助けられた。」
腰に下げた剣を手にして頭を下げる。
「本当にありがとうございました。」
「…助言をしたのはリュネで、その剣を選んだのは小僧、お前だ。」
作業の手を止めた親父さんが、カウンターに歩み寄る。
「それでも、この剣を出してくれたのは親父さんで、支払いまで待ってもらってる。感謝して当然だろ。」
そういうと、親父さんの視線が剣へと向けられた。
「見せてみろ。」
言われて、手にした剣をそっとカウンターに置いた。
親父さんが鞘から剣を抜くと、柄頭から剣先までを確認していく。
一通りの確認が終わると、そっと鞘へと納めた、
「ふんっ、それなりには使えているようだが、まだまだだ。修行が足らん。」
親父さんはそう言うと、店の奥へ戻り作業を再開してしまった。
「ははっ、頑張るよ。」
「話しが終わったなら帰れ。」
俺が言葉を返すなり、親父さんはそう言って眉間に皺を寄せる。
「どうせあやつには会っておらんだろう。とっとと帰れ!」
どうやらリュネさんにも早く顔を見せろと言いたいらしい。
親父さんらしい言葉にくすりと笑む。
「分かった。また来るよ。次ぎはいくらか支払いに。」
「ふんっ、踏み倒したら二度と売らんからな!」
親父さんの声を背に、俺は店を出た。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




