話し方
翌朝、朝食を済ませた俺達は、早々に町へ戻ることにした。
俺の体調に問題がない事が確認出来たため、とりあえず顔を見せに戻ろうという話しになったからだ。
"御方より今後もこの聖域への転移の許可をいただいた故、訪れる際には我を呼ぶがいい。"
ゼーンの親父さんがそう云ってくれた。
「親父さんありがとう、ございます。手間をかけてしまうけどお願いします。」
"むう…其方、御方や庇護者達と話すときの言葉遣いにならぬか?"
俺が礼を言うと、何故か親父さんが鼻に皺を寄せてそう云った。
「えと、何かまずかった…ですか?」
"いや、なに、改まった言い方をされると、何となく座りが悪いと言うか、落ち着かぬ。其方達とは友誼を持った付き合いを望む故に、普段の話し方で頼む。"
「え、俺としては楽だけど、落ち着かないって言うのは何で…。」
"お前が丁寧語を使うと慣れていないのが丸分かりなうえ、感情が上滑りして言葉が響いてこんのだ。それ故、聞いていて違和感が強くなる。"
親父さんの思いがけない言葉に戸惑っていると、爺さんが俺の疑問に答えた。
「なんか酷い言われ様だな。」
"酷いのはお前の言葉遣いだ。直ぐにとは言わんが、上位者に対する話し方は身に付けておけ。今は身内の間柄だからこそ許されておるが、相手によっては自身の首を絞める事にもなりかねん。いずれ旅をしようと思うなら尚の事。"
ぽつりと溢した感想に、呆れた口調からお小言まで貰う羽目になった。
「…まあ、おいおい努力する…。」
"あてにならなそうな返事だな。"
渋々と返すと諦めたような口調とため息が返ってきた。
俺は敢えて言わないが、丁寧な話し方については一応、司祭様から教わってはいるんだ。苦手だから敢えて言わないが。
「お二人ともそのくらいに。」
「せっかく銀狼殿が友誼をと言ってくださっているんだ。お言葉に甘えていいんじゃないか?」
アルミーとジェミオが俺と爺さんの遣り取りに制止をかけ、話しを戻す。
「じゃあ改めて、親父さん、頼みます。」
"うむ。"
「ところで、親父さんを呼ぶ方法ってどうしたら?」
"庇護者達には我が体毛より編んだ護符を渡してあるが、其方ならば一の子との繋がりがある故、一の子を通して呼べば良い。"
"離れててもオレ、ヴェルデの声なら聞こえるから!"
ついさっきまで俺と一緒に行きたいと云っていたゼーンは、親父さんから転移を始め、諸々の事を学んでからにしないと俺を手伝うには力が足りないと言われ、素直に諦めた。
"オレ、頑張って出来るだけ早くヴェルデと一緒に転移出来るようになるから!"
そう宣言した時のゼーンの瞳は、剣士を目指す宣言をした時のフィオを思い出させた。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




