指揮者命令
「込められた魔力が続く間であれば、どこまででも。だが、感覚を繋ぐために消費される魔力は距離に比例して増えていく。この体は核として使ったのが剥がれ落ちた鱗でそれほど魔力を込めておらんからな、精々五日ぐらいだろう。」
俺の問いに爺さんが答えた。
「核が別のものなら…というか、分体で旅をすることは出来ないのか?」
改めて聞き直すと、爺さんは苦笑を浮かべた。
「そんなことを考えておったのか。お前の住む町で数日滞在するというならともかく、かの国のあった場所までというのは流石に不可能だ。分体というのは魔力を失えば消失する。本人が傍で魔力を注ぎ続けるか、高位の魔石等の特殊なものを核にするのでなければそう長くは持たんよ。」
「……。」
「私の事はいい。頼み事をしておいてこういうのもなんだが、お前はお前の望むまま、己に恥じぬ生き方をすればいい。」
もしかしたらという思いで聞いたが、やっぱり無理らしい。
それでも何か方法はないのかと思考を巡らせる俺の頭に手を載せた爺さんは、好きに生きろと言った。
「さて、私も休むとするか。お前も目覚めたばかりだ、早めに休むといい。」
「…寝過ぎて、寝らんないよ。」
小さく息を吐いた爺さんは、ぽんぽんと俺の頭に触れた後、ふわりと溶けるようにその姿を消した。
「…諦めんなよ…」
ぽつりと呟いた俺は仰向けに寝転ぶと、舞い踊る光珠達を眺めながら、思考の海に沈んだ。
暫く考えていたが結局いい案も浮かばず、焚き火の傍へ戻りジェミオに火の番を変わると告げると、予想外の返事が帰ってきた。
「交代はいいからお前は寝ろ。指揮者命令だ」
「いや、もう大丈夫だって。」
「そうかもしれんが、俺達が安心出来ない。幸いここなら周囲の警戒も必要ないからな。今日のところは寝ろ。」
そうまで言われてしまうと散々心配かけた手前、嫌だと言える筈もなく受け入れるしかなかった。
「…分かった。」
そう返事をした俺は、アルミーの近くで横になった。
先程の指揮者命令、前にも同じことを言われたなと、数日前の事ながら妙に懐かしく感じた。
爺さんが魔法で作った蔦を編んだ寝床は、ふわふわしているのに弾力があり、とても寝心地のいいものだった。
俺も使えるなら今度教えて貰おうか、さっきの分体も使えたら便利だよな等と考えているうちに、気がつけば眠っていた。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




