精霊の灯火
木々の向こうに広がる暗闇を背景に、色とりどりの淡い輝きが舞い踊る。
空に夕闇が広がり始めた頃から、近くにいた精霊達が光を纏い周囲を飛び回るようになり、聖域の空間を美しく彩った。
俺達は食事を済ませると、焚き火から少し離れた場所で、幻想的な光景を眺めていた。
今、眺めているのは三人と一頭。
ゼーンの親父さんは俺達との話しを終えると、奥さんと他の子供達の元へと帰って行った。
「綺麗だよな。」
"うん。"
「こんなに沢山の精霊が飛び回る姿なんて、そう見られるもんじゃないな。」
「ただでさえ精霊を間近で見ることは滅多に無いんだ。ましてや夜なんて、冒険者か幸運な旅人ぐらいしか精霊の灯火を見る機会はないだろ。」
優しい光景に和み、言葉を交わすところへ近づく気配がひとつ。
「どれ、私も暫し鑑賞の輪に入れて貰おう。」
そう言って人の姿をとった爺さんが隣に腰を下ろした。
「その声はトニトルス殿。」
「そのお姿が話しにあった人化というものですか。」
ジェミオとアルミーの二人が驚きの表情を浮かべながらも、目の前の人物が爺さんであると理解しそう言った。
「ああ、この姿は人化した時と同じだが、今のこの体は魔法で作り出した分体だ。」
爺さんはひとつ頷きながらそう答えた。
「態々魔法使って見に来なくても、普段から見慣れてるんじゃないのかよ?」
「普段はこれほど多くの精霊達が集まることは無い。」
「そうなのか?」
「精霊達もお前達が助かったことを喜んで浮かれておるのだ。」
俺の言葉に爺さんが苦笑してそう言う。
それを聞いた俺は、近くを飛んでいた光珠へそっと手を伸ばす。
光珠は驚いたのか一瞬距離をとったが、直ぐに近づいてきて掌の上に下りた。
「いろいろとありがとな。」
そう感謝を伝えると光珠はくるくると回った後、ふわりと飛び上がった。
その様子を見上げていると、幾つかの光珠が傍に寄ってきたので同様に感謝の言葉をかけると、さっきと同じようにくるくると回って飛んで行く。
"ヴェルデって精霊にも大人気だね。"
「俺が爺さんの血縁だからだろ。」
「本当にお前は素直なんだか、そうでないのか…」
ゼーンとの会話に爺さんが溢すのを聞き流していると、ジェミオとアルミーが静かに立ち上がった。
「それじゃ、先に火の元へ戻るぞ。」
「俺は先に休ませて貰うよ。」
「ああ、もう少ししてから戻るよ。」
踵を返す二人にそう答えると、視線を戻した。
そして暫くの間、会話も無く過ごしていると、気がつけばゼーンが眠っていた。
流石にまだ子供だ。疲れたんだろう。
そっとゼーンを撫でながら、爺さんに聞いた。
「なあ、爺さん。分体って本体からどの程度までなら離れられる?」
お付き合いいただき、ありがとうございました。




