最高の家族
"いや、なに、久方ぶりの人化で、しかもそれなりの力を込めた攻撃など、そう出来るものではないのでな。お前の鍛練ではあったが、多少楽しんでしまったのは本当だ。すまんな。だが、いい経験になっただろう?"
「…まあ、もういいけどさ。お陰で色々と身に付いたしな。」
動揺するかと思ったのに、あっさりと認めた爺さんに拍子抜けして、逆に俺の方が躊躇いでしまい、誤魔化すように渋々と返した。
ふと周りが沈黙していることに気付き目を向けると、皆が皆、温かい目で俺を見ていた。
え、何だよ?
「いや、すっかり祖父と孫だなと思ってな。」
俺の表情から疑問に気付いたらしいジェミオが言った。
うん、そうなんだよな。初めは血族だって言われてもぴんと来なかったけど、竜の血を通して、繋がりを感じてる事に気付いてからは、俺の中で『家族』の認識になってるんだよな。既にそういう意味で『爺さん』って呼んでるし。
「…まあ、実際に血は繋がってるし。何だかんだ言って精神の世界で何ヵ月も一緒だったしな。奔放な爺さんに付き合ってたら、改まった話し方なんてしてられないよ。」
"お前が僅かばかり丁寧な話し方をしたのは初めだけであろう。すぐに素の口調になったうえに、癇癪を起こして声を荒げておった未熟者が、私が悪いみたいに言うでないわ。"
「初対面から『赤子並み』だ何だと他人の神経逆撫でするような事しといて、俺が気が短いみたいに言うなよな! 」
すかさず口を挟んでくる爺さんと言い合いになると、ゼーンがぽつりと云った。
"二人ともそっくりだよね。"
"「……。」"
揃って沈黙した俺と爺さんを見て、皆が吹き出したのは納得できないが、俺達は何も言えなかった。
◇ ◇ ◇
その後、ゼーン達の話を聞いた。
銀狼夫婦がこの森に来てから起こったことと、ゼーンとの出会い、眠りから起きてからの事や、ゼーンの母さんや兄弟の状況。
聞いていてゼーンとの出会いは、星の導きとも思える運命を感じた。
ゼーンも俺を『待ってた』って言ってたしな。
今度、ゆっくりゼーンと話をしよう。
そして町の様子と今後についてを聞くことになった。
「ギルド長には全てを報告した。そしてギルドとして竜王殿や銀狼殿の意向に沿う形で、森の異常の原因は銀狼一家が森へ一時的に定住をすることになった為。今後、森の監視者としての協力を得られることを説明した。」
「そして銀狼一家への敵対行動の禁止が通達された。違反した者は、冒険者資格剥奪に口外禁止の誓文の刻印、および犯罪者として裁かれる。この事について所属の冒険者達からの異論は一切無かった。」
ジェミオとアルミーが一通りの説明をしてくれた。
「…すごいな…」
"すごいって、何が?"
俺の口から溢れた一言にゼーンが疑問を投げてきた。
「俺達がしている冒険者の仕事の中に、危険な魔物を退治したり、希少な素材を獲ってくるっていうのがあるんだ。だから冒険者によっては、危険な魔物は倒した方がいいって考えたり、希少な素材をどうにかして入手しようとしたり、珍しい魔物を生け捕りにして売ろうって考えるやつもいるんだ。でも町の冒険者はそんな風に考える人はいなかった。冒険者の皆が良い人達だって知っていても、思いが一つになれるってやっぱりすごいなって。」
町の冒険者を誇らしく思いながら、そう説明した。
"さすが、ヴェルデの家族だね。"
「ああ。そうだな。」
誇らしげにそう言ってくれるゼーンを抱き上げながら、俺は相槌を打った。
お前も最高の相棒だよ。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




