武器屋にて
武器屋に向かう道すがら、屋台で朝食を買う。
今朝は樹木鹿の肉を焼いて、炙ったパンに挟んだもので、パンは暖かく、肉はあっさりしているが旨味があり、適度な塩加減と臭み消しの香草が良く合っていて俺の好物の一つだ。
買った二つを腹に納めると、通りを真っ直ぐ進み、武器屋に向かった。
◇ ◇ ◇
武器屋に入ると中には客はおらず、店主の親父さんがカウンターの奥で武器の手入れをしていた。
この店は知らない者が入ると必ず驚く。何故ならここは武器をカウンターの外に置いてない。
親父さんのこだわりで、武器を使う本人が直接来て、欲しい武器、戦い方を聞き、体つき等を見たうえで、見合う武器を出して見せてくれる。
出された武器に対しての相談は聞くが、納得がいかない客には一切売らないという、商売をする気があるのかと聞きたくなるような売り方をする。
だが、親父さんの目利きは確かで、選んだ武器には間違いがない。上級者は大方この店の常連だ。
俺は何もない広々とした店内のカウンター越しに声を掛けた。
「親父さん、魔力通せる剣ある?」
「小僧、この間の剣はどうした。寿命にはまだ間があるはずだ。」
親父さんはこちらを一瞥して訊いてきた。
俺は黙って折れた剣を鞘ごとカウンターに置いた。
親父さんは作業の手を止め、置かれた鞘を手に取り剣を抜いた。
折れた剣を見た親父さんが無言のまま強烈な重圧を放つ。
背中に冷たい汗が流れるが、親父さんから目を離さず耐える。もしここで逃げるような奴は、二度と客にはなれない。
ひたすら耐えていると、少しだけ重圧が軽くなる。
「何をして折れた。」
「昨日、森で遭遇した荷車大の大猪を仕留めるのに魔力を通した。」
訊かれたことに、簡潔に詳細を伝える。
答えた直後、重圧が消えた。
俺はホッと息をつくと、店の奥に剣を取りに向かう親父さんの背中に希望を告げる。
「今の俺が扱える中で一番の剣が欲しい。」
足を止めた親父さんが振り返り、目で理由を訊いてくる。
「買うなら今持てる最上の物を選ぶように助言を貰った。」
「…リュネか。待っていろ。」
親父さんは俺の答えに目を眇ると、踵を返し店の奥へ消えた。
暫くして、親父さんは一本の剣を持って戻ってきた。そしてカウンターに置かれた剣に俺の目は釘付けになった。
黒曜石のような艶のある漆黒の鞘には月桂樹と加密列が彫り込まれており、鞘だけ見ても言葉にならない美しさがある。だが美しさだけじゃない、この剣の凄みというか、存在の大きさのようなものを感じる。
「手にとって抜いてみろ。」
言葉を無くして魅入る俺に、親父さんが言った。
俺は手を伸ばし慎重に剣を取ると、そっと鞘から抜いた。
現れたのは白銀の剣。
その姿を見て一瞬呼吸をするのを忘れたが、ふと剣が自身の手に馴染んでいることに気付く。
先程から感じている存在感はそのままに、まるで以前から使っていたような感覚があった。
「やはり馴染んだか。」
親父さんの声に我に返る。
「親父さん、この剣は一体。」
「この剣は神鉱と竜骨で出来ている」
「……は?」
言われた言葉の意味が理解できず、間抜けな声が漏れた。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




