目覚め
まるで水の中を漂うようなふわふわとした感覚で、自分の意識が徐々に覚醒していくのが判る。
目蓋に映る木漏れ日の明るさは眩しすぎる事もなく、ただ今が日中であることを教えてくれた。
そっと目を開けるとぼやけた視界が次第に焦点を結び、濃緑の木々の梢と透き通るような青い空が見えた。
慣れたものよりも濃い森の香りが感じられる。
「…生きてる。」
無意識にぽつりと零れた自分の声に、漸く自分が目覚めたのだと実感した。
「「ヴェルデ!!」」
良く知った少し懐かしく感じる声が俺の名を呼び駆け寄って来る気配に、ゆっくりと上体を起こす。
「目が覚めたのか! 身体の調子はどうだ? 俺たちが判るか? 」
「良かった! 気分が悪かったりしないか?」
俺の目覚めに気付いたジェミオとアルミーは側へ来ると、屈んで俺を覗き込むようにして矢継ぎ早に言った。
「ああ、大丈夫だ。ジェミオ、アルミー。気分も身体も問題ない。」
そう答えると二人は安堵の息を吐いた。
「あのさ…! あ。」
二人に礼を言おうとしたその時、側に空間の揺らぎを感じた。そして次の瞬間、腕の中にふわふわとした温もりが現れる。
"ヴェルデ、待ってたよ! おはよう! お帰り!"
「ぅぶっ。」
転移で腕の中に飛び込んできたゼーンが、そう言って尻尾をぶんぶんと振りながら俺の顔を舐め回してきた。喜んでくれるのは嬉しいが、これでは返事も出来ない。
俺は仕方なく、興奮しているゼーンを引き剥がした。
「っ、待て、ゼーン。解ったから。ちょっと舐めるのは止めろ。返事も出来ない。」
"ああ、ヴェルデごめん。嬉しくって。"
両脇を持たれてぶら下がった状態のゼーンは、変わらず尻尾を振り回しながら謝った。
俺はゼーンをそっと下ろして感謝を告げる。
「いや、喜んでくれてるのはしっかり伝わったよ。おはよう、ゼーン。そしてただいま。精神の中では、随分助けて貰った。ありがとう。」
"うん。オレはヴェルデの相棒だからね。"
ゼーンが『当然!』と言わんばかりに目を輝かせ、ふんすと鼻を鳴らす。
その姿に癒されながら、わしゃわしゃと撫で回した。
「ああ、これからも頼りにさせて貰うよ。宜しくな。」
"まかせて! オレがんばるよ! オレの方こそよろしく!"
「お互いにすっかり馴染んでるんだな。」
俺達の遣り取りを見ていたジェミオが言った。
「まあね。これからずっと一緒なんだ。遠慮なんて要らないだろ。」
俺はそう答えると、さっき言いかけた事を改めて口にした。
「二人には心配かけたうえに、沢山助けてもらったみたいだな。感謝してる。ありがとう。」
「確かに心配と冷や冷やはしたがな。お前が助かったならそれでいい。」
「今回みたいなのは、二度目は遠慮したいけどな。」
俺が頭を下げると、二人は俺の頭をわしゃわしゃと撫で回した。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




