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俺と魔剣(あいつ)の冒険譚  作者: アスラ
76/119

形見

俺の否定(ひてい)に対し(じい)さんは首を振った。


定義(ていぎ)とは物事を判断するため誰もが解るように示した特徴や条件であって絶対ではない。()てして強い想いは定義(ていぎ)や常識を(くつがえ)すものだ。」


そう言うと(じい)さんの眼差(まなざ)しに(あき)れが()じる。


「それは魔法という力を行使(こうし)する者であれば肌身(はだみ)に染みておるだろうに。存外(ぞんがい)お前の思考は固いなぁ。」

「…。」


言われて普段はもう少しましだとか、色々と言いたいことは浮かんだが、このところ立て続けにやらかした自覚もあって沈黙した。


「そんな顔をするのは自覚があってなによりだ。まあ、これから経験を重ねれば幾分(いくぶん)かましにはなるだろう。では、本来の話しに戻すぞ。」


俺がどんな表情をしていたというのか、(じい)さんはひとつ(うなず)くと剣について再び話し出した。


「お前の持つ剣に使われた竜骨(りゅうこつ)は、私の妻のものだ。」

「!!」

「妻が生前、呪いを受けるよりも前に懇意(こんい)にしていたドワーフの鍛冶師(かじし)に頼み、死後に(たく)した骨が使われている。」


俺は白銀(はくぎん)の輝きを持つ剣を脳裏(のうり)に浮かべる。

あの剣に使われた竜骨(りゅうこつ)が爺さんの妻のものってことは…


「…婆様(ばあさま)の…。」

「そうだ。本来ならば娘を(つう)じて孫に送られるはずだった守護剣だ。妻は愛する娘や孫を守りたいと強い思いを抱いていた。そしてその想いを知る鍛冶師(ドワーフ)(きた)えた剣は守護の力を持つ魔器(まき)でありながら、『守りたい』という(おも)いの宿(やど)魔剣(まけん)となった。」


精神(ここ)の暗闇の中で俺とゼーンを包んでくれた(あたたか)かな光を思い出す。


「かの国に届けられたはずの剣が、どのような経緯(いきさつ)があってお前の手に(わた)ることになったのかは判らんが、これも星の(みちび)きなのだろう。」


(じい)さんと視線(しせん)()わすと、(おだ)やかな表情(かお)をしていた。


「ヴェルデ、無理にとは言わんが、(かな)うならその剣と共に娘の墓前(ぼぜん)(おとな)って欲しい。」


婆様(ばあさま)と娘を会わせてやりたいのか。

あと、血族の生き残りである俺も。

はっきり言えばいいのに、(じい)さんも大概(たいがい)素直(すなお)じゃないなぁ。


(わか)った。ゼーンと世界を見て回るって約束してるんだ。何時(いつ)とは言えないけど必ず行くよ。」


俺は口の端を上げてそう答えた。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

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