魔具と魔器
「流石に竜の姿じゃ大騒ぎだろうけど、今の姿になれるなら問題ないだろう? …もしかしてこの期に及んで『会わせる顔がない』とか言うのか?」
俺は初めて見る爺さんの力の無い表情に戸惑い、誤魔化すように口調を早めて言った、
「まあ、会わせる顔が無いというのも有るにはあるが、それ以前にもう動けんのだよ。」
「それって…。」
「そうだ、私の死期は近い。」
爺さんの言葉に心臓が大きく鳴った。
「最後の戦いの前に、妻は娘を庇いその身に滅びの呪いを受けた。解呪の方法は無く、そのままでは肉体どころか魂までもが消滅してしまうと判った時、私は妻が止めるのを聞かず、呪いの一部をこの身に移した。そして呪いによって命尽きる前に妻の望みのまま私の手でその命を断った。この身に移した呪いの一部は時をかけ蝕み続け、命の核たる魔石を石と変えてきた。私はじきに星へと還る。」
「……。」
俺は爺さんの語りを聞きながら、俯いて胸元を強く握り締めていた。
胸の中に怒りとも、悲しみともつかない感情が荒れ狂い、言葉が出てこない。
「なあ、ヴェルデ。魔剣には二通りあるのを知っているか?」
唐突に話を変えて爺さんが聞いてきた。
反射的にリュネさんに教わったことが脳裏に浮かぶ。
「…剣に限らず、武具や道具に魔のつくものは二通りある。強い魔法や魔力を宿したものを魔具、自我の残る魔石を取り込んだ意思あるものを魔器、そう教わった。」
「ほう、そこまで正確に理解しているならば話しがしやすい。」
俺がぼそぼそと答えた内容を聞いて、爺さんは感心した後、幾分か嬉しそうな口調で言った。
そんな爺さんの反応の意味が解らず、俺は眉をしかめた。
「お前が携えている竜の力を宿す剣。あれは魔具であり魔器でもある。」
「?? あの剣はミスリルと竜骨が使われてるから魔具であることは間違いないけど、魔具と魔器その両方って定義的にありえないだろ。」
爺さんの言葉に、俺は否定を返した。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




