鍛練再び
自分の全力を体感、危険度を目の当たりにした後、竜王の爺さんの鍛練が始まった。
が、その内容はまたしても「何処が鍛練だ!?」と訊きたくなるような、実戦あるのみというものだった。
向けられる攻撃を躱し、いなし、耐えながら、魔力を乱さずに一撃を入れるだけ。
自身の魔力を制御したまま攻撃が当たれば、鍛練終了。
言葉にするのは簡単だが、それを成すのは困難でしかない。
多種多彩な魔法、斬撃、体術のどれもが鋭く、重く、苛烈なもので、凌ごうとしても容易にはさせてもらえない。
「何で竜が剣術や体術を使えんだよ! 反則だろう!?」
「なに、昔、竜王になるよりも前にこの姿で世界を巡っておった時に興味を持ってな。当時知り合った『剣聖』や『拳聖』の連中から手解きを受けたのだ。」
最初の方で、納得がいかないと不満を訴えると、そんな答えが返ってきた。
「人型の姿の時には重宝してな。連中が代替わりするなか、何度か訪ねて行っては剣や拳を交えたものよ。」
そう言って懐かしそうに笑う爺さんを半眼で見る。
なにか? 趣味で人族の最強、そのお歴々の指導を受け、粋を極めた技の数々が振るわれてると?
「ふざけんな! んなもん何度も喰らったら本気で死ぬわ!」
思わず怒鳴った俺は悪くない。
「だから死なぬように処してみろと言っておるのだ。大体、手加減してはいざという時の制御など身に付かんだろう。」
「物には限度ってもんがあるだろう!? 常識的に考えろ!」
「お前…、私やお前の存在が『常識的』だなんぞと思うのか? 片や歴史の一片、片や突然変異に近い先祖返り。何を持って常識を謳うのか。我らが『常識』であるなら、このような鍛練などしておらんわ、たわけ。」
「……。」
飄々と返す爺さんに常識をぶつけたら、痛烈な皮肉と現実をもって打ち返された。
ちくしょう。
◇ ◇ ◇
そんなやり取りを挟みつつ、何度もずた襤褸にされて、地に転がっては限界に意識を飛ばすこと…たくさん。
もう仕切り直した回数も、体感時間の経過も意識に上らなくなった頃。
偶然崩れた態勢からの一撃が、爺さんの腕を掠めた。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




