本当の事 (side アルミー)
俺達は明日の朝一でヴェルデを迎えに戻る事を連中に告げ、フィオを伴いギルドを出た。
薬屋へ向かう道すがら、フィオに双子の様子を訊く。
「フィオ、ミニスとミオスが助かったとは聞いてるが、今の二人の容態はどうなんだ?」
「あいつらならもう大丈夫。魔力の流れに異常は無いし、熱も今日の明け方にはすっかり下がったって。」
返って来た答えに俺達は安堵した。
「そうか。ヴェルデが聞いたら喜ぶな。」
「………。」
良かったと溢すジェミオの横で、フィオは黙ったまま俯いた。
「どうしたんだ、フィオ?」
様子が気になり声を掛けると、フィオは顔を上げ言った。
「二人とも、本当の状況を教えてくれ。」
「…どういう意味だ?」
「ヴェルデに何かあったんだろ?」
訝し気に聞き返したジェミオに、フィオは言った。
「ヴェルが無事でいて、俺に何の伝言も無しに返ってこないなんてあり得ない。ならヴェルに何かあったのは間違いない。二人が一緒にいて、それでもヴェルが帰れない何かが起きたってことだろ。あいつに何が起きてる? 頼む、教えてくれ。」
ヴェルデとよく似た真っ直ぐな眼差しが、やがて縋るようなものに変わっていった。
この様子では、誤魔化しも沈黙も効かないだろう。
下手に扱えば独りで森に向かいかねない。
ジェミオを見ると、しょうがないといった表情を浮かべて視線を投げてきた。
俺が頷くのを見て、ジェミオはフィオに向き直り言った。
「分かった。消耗品の補充の後、宿に戻ったら話してやる。半刻程度で終わるだろうから、後で俺の宿に来い。」
「いや、何も予定は無いから一緒に行くよ。」
「…そうか、じゃあさっさと行くぞ。」
間髪入れずに答えたフィオを連れ、必要な買い物を一通り済ませてジェミオの定宿へ向かった。
◇ ◇ ◇
「…とまあ、そういうわけでヴェルデの奴は銀狼の元で覚醒の眠りに就いてる。」
「銀狼曰く、身体の変化と魔力が落ち着けば、じきに目を覚ますそうだ。」
「……。」
宿のジェミオの部屋で結界を張ってから、フィオに森での出来事を竜王と死にかけた事を省いて血の覚醒と従魔契約、そして眠りの事を伝えた。
流石に予想外だったのかフィオは呆けた様子で沈黙した。
俺達は黙ってフィオの反応を待った。
「…、…、ヴェルの奴、血の覚醒と従魔契約とか、森を調べに行って何でそんなことになる? やらかすにもほどがあんだろ。」
やがてフィオの口から溢れたのは呆れ返った言葉だった。
まあ、本人が意図していないとはいえ、結果としてそう言われてしまうのは仕方がないだろう。
「まあ、ヴェルデにとっても予想外の事態だ。そう言うな。」
苦笑したジェミオが言うと、フィオは首を横に振った。
「ヴェルの魔力認識の高さは二人も知ってるだろう? 本来のあいつなら、自分の魔力に変調があれば直ぐに気付けた筈なんだ。でも森に向かった時からヴェルの様子はおかしかった。ヴェルの事だから、考え事に意識が向きすぎて身体に影響が出るまで気付かなかったんだ。」
確信を持って言い切るフィオに、俺もジェミオも舌を巻いた。
確かに森へ向かった時点で既にヴェルデは予言の言葉に思い詰めていた。そして精神的に余裕の無い状況から一転、自虐的な思い込みを指摘され羞恥で悶々としていたあの状況で、自身の変調に気付かないのも当然と言える状況だった。
だが、その辺りの話しは一切していないにも関わらず、正確に状況を言い当てたフィオに
『流石、相棒と呼ばれる幼馴染みだ』と感心してしまった。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




