重要な任務
リェフの言葉に周りの連中が同調し、あちこちから「俺も」と声が上がり一気に騒がしくなった。
「なんで戻ったのがお前らだけなんだ? ヴェルデに何があった?」
俺達を睨み付けながら問うリェフの言葉にざわめきが沈黙に変わる。誰もが気になっていて、口に出来なかった問い。
現状だけを見れば最悪しか浮かばないのも仕方ない。逆の立場であれば俺も同じ様な行動に出ただろうしな。
苦笑が浮かびそうになるのを堪え、話しをしようとしたその時、入り口へ飛び込むようにしてフィオが駆け込んできた。
「っ、ヴェルが戻ってないって本当か!?」
乱れた呼吸を整えるよりも先に問いかける。
そして場にいる面々を見渡して俺とアルミーに気付くと、駆け寄り掴み掛かってきた。
「何でヴェルがいないんだ!? ヴェルに何があったんだよ!?」
「!」
「何とか言ったら「そこまでだ。」」
普段のフィオの様子からは掛け離れた剣幕に、一瞬反応が遅れた。その間を言い淀んだと感じたのか、更に詰め寄ろうとしたフィオをギルド長の声が止めた。
「フィオ、その手を離せ。」
「でも!」
「フィオ、落ち着け。大丈夫だ。あいつは生きてる。」
「えっ…。」
ギルド長の再びの制止に続けた俺の言葉で、フィオがその動きを止めた。
「…ヴェルが生きてる…。」
「ああ、ヴェルデは生きてる。」
アルミーも肯定すると、フィオの手は緩みゆっくりと下ろされた。
そして正しく言葉の意味を理解したところで、落ち着いたいつもの眼差しが戻った。
フィオとのやり取りを黙ってみていた周りの連中も安堵の表情を浮かべていた。
「ジェミオ、ごめん。俺、ヴェルが戻ってきてないって聞いて…。」
「大丈夫だ。解ってる。気にするな。」
俯き謝罪を口にするフィオの頭をわしわしと撫でてやった。
「それで、ヴェルデの奴が生きてるってのは分かったが、何であいつは戻ってこないんだ?」
流れが一段落したと見たリェフが改めて訊いてきた。
「ヴェルデには重要な役目を任せてるところだ。」
「重要な役目って?」
何故か勿体ぶった物言いのギルド長に、フィオが訊く。
周りの連中もヴェルデが生きてると分かった途端、興味津々といった様子で注視している。
「ヴェルデには銀狼の子の相手をしてもらっている。」
「えっ、それって…。」
「要は子守りだ。」
ギルド長が改まった言い方をして、フィオがまさかといった表情を浮かべたところで、ぶっちゃけてやった。
「「「「「… … …」」」」」
「くっ、ははっ。こ、子守りって…」
静まり返った中、リェフが吹き出し腹を抱えて震えている。
次の瞬間にはギルドの中は笑い声に包まれた。
「銀狼の子を十字蜘蛛から助けたことでずいぶんと気に入られたようで、暫く相手をすることになったんだ。」
「くくっ。そういうことか。あいつらしいな。」
アルミーが詳しく話すと、今だ笑いの治まらないリェフが得心した様子で言った。
「何だよ。それならそうと先に言ってくれたら良かっただろ?」
「その話しをしようとしてたところで、お前が駆け込んできたんだろうが。」
「いや、だって、それは…。し、仕方ないだろ。ヴェルがまた無茶やらかしたのかと思ったんだ。」
愚痴を溢すフィオに話しを中座させたのはお前だと告げると、反応に困る言葉が返ってきた。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




