制約
話しを終えギルド長と階下に下りると、普段なら騒がしい場は重苦しい空気に包まれていた。
俺達が下りてきたことに気付いた数名がこちらを見ると、それに倣うように他の者達もこちらへと視線を向けた。
その表情はどれも憤ったような、または耐えるような表情をしており、中には今にも泣き出すのではないかといった者までいる。
だが誰も何も言わず、ギルド長が話すのを待っていた。
「皆聞け。調査から戻った二人から報告を受けた。判ったことを伝える。まず、森の異常の原因だが、これは銀狼が住み着いた事によるものだった。」
銀狼と聞いて皆に緊張が走り、場がざわめく。
当たり前だ。昔語りで語られる強大な力を持つ魔獸、その存在は現在においても確だと言われるが、一生会うことの無いだろう存在。
驚き、不安に思う皆の反応は至極当然のことだと言える。それなのにあの義弟は…。
ヴェルデと銀狼の会話を思いだし、思わず明後日の方へと視線を投げた。
「落ち着け!!」
ギルド長の一喝で、場は一瞬で静まり返る。
「大丈夫だ。こちらから手を出さない限り、襲われることはない。」
「ギルド長、なんでそう言い切れる? 根拠はあるのか?」
告げるギルド長に、上級者の一人が疑問を投げ掛ける。
「それは銀狼に会ったこいつらが交渉した結果だ。」
ギルド長はそう言って俺達へと一瞬だけ視線を向けた。
場は再びの驚愕に包まれる。
だが、ギルド長はそれを無視して話しを続けた。
「銀狼は番でガルブの森で子を産んだらしい。幼体が育つまでは移動はないだろう。そこでギルドとしてガルブの森について新たな制約を設ける。」
それを聞いた皆は真剣な表情になる。
「銀狼とその幼体に対しての一切の手出しを禁止する。従わず手を出した者は冒険者資格を剥奪、関係する情報を口外できないよう誓文を刻む。 また、町を危険にさらした犯罪者として裁かれることを覚えておけ。」
「この町の冒険者で敵わないと判ってる相手に襲撃掛けるような馬鹿はいないぜ。」
「何より町を危険にさらすような恩知らずは、俺達が許さねえ。」
制約内容を聞いた上級者達から返ってくる言葉と相づちを打つ冒険者達にギルド長が肩の力を抜いたときだった。
「…だが、事と次第によっちゃ話は別だ。もし銀狼があいつを、ヴェルデを殺ったって言うなら、俺はなんと言われようと銀狼の奴を許さねえ。」
さっき疑問を投げ掛けた上級者、リェフが俺達に鋭い眼差しを向けた。
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