小芝居
気が付くと仰向けにに倒れていた。
何がどうなってる?
「……、うっ、……っつ、ぐぅ。」
起き上がろうとして、身体の痛みに呻く。
特に右足が酷く痛んだ。
そうだ、この足はさっき魔力弾に当たって…その後、向けられた強大な魔力に対し、無我夢中で紡いだ魔力をぶつけたんだ。
「結果、ここまで吹っ飛ばされたと。」
そう口にして『治癒』を唱えつつ周囲を見回すと、遥か離れたところで魔力の残滓がバチバチと弾けているのが見えた。
「え、あそこから飛ばされてここって…つっ」
衝撃の凄まじさに加え、直前に向けられた死を思わせた魔力弾の魔力を思い出す。そして無我夢中だったとはいえ相殺するだけの魔力を放った事に気付きぶるりと震えた。
「これが今のお前の全力だ。お前が制御出来なければあの力は暴走する。己の力がいかに危険か解っただろう。」
気が付けば直ぐ側に竜が立って俺を見下ろしていた。
そうだ、俺は先祖の竜に殺されそうになってたんだっけ。確かにいつ暴走するか判んないなら今の内にって考えがあるのも判ってる。それでも、もう魔力が殆ど残ってないけど、最後の最後まで俺らしく抗ってやる。
「では、回復が終わったら鍛練を始めるぞ。」
「へ?」
俺が抗う気になった途端、思いがけない言葉が聞こえた。
「え? 何を始めるって…?」
「鍛練を始めると言ったのだ。聞いていなかったのか?」
「は? え? 俺を見限ったから始末しようとしてたんじゃないのか?」
困惑しながら問うと竜はニヤリと悪そうな表情を浮かべた。
「あれはお前の全力を解らせるための小芝居だ。命の懸かった状況でなければ、本当の全力など出せんだろう? 大体、庇護者に助けられた孫同然の血族を簡単に死なせるわけがなかろう。」
「なっ…。」
そういえば始末されるってなったのに、最後の攻撃以外は俺が捌ける程度の威力だった。
おかしいって気付けよ俺。
いや、それより。
「教えることは出来ないって言ったのあんただろう。なのに鍛練って言ってること矛盾してないか?」
「何も矛盾などしておらんよ。私は教えるのは無理だと言ったのだ。制御の感覚など自身にしか分からぬ。まして全力の攻撃など、いくら予測していても実際に撃ってみねば分からなくて当たり前だろう。実際に撃った感覚を基礎に、制御を鍛える他に方法など無いわ。」
疑いの眼差しで言うと、竜は悪びれもせずに答えた。
「それじゃ…。」
「そうなるように仕向けたとはいえ、お前の一人鬪舞だな。だいたい私は初めから鍛えてやると言っていただろう。」
愕然とする俺を見て、あからさまに面白がった様子の竜に脱力する。
「まあ、私がしっかり鍛えてやるから安心しろ。そうだな『お祖父様お願いします。』と頼むなら少しは手加減してやるぞ。」
見た目が中年の、三千歳越えの竜が宣う。
俺は力一杯叫んだ。
「誰が言うか性悪祖父!!」
お付き合いいただき、ありがとうございました。




