憂いを絶つ
「教えることは出来ん。」
頭上からの答えに身体が一瞬硬直する。
俺は頭を下げたままもう一度頼んだ。
「お願いします! 俺に制御の方法を教えてください!」
「無理だ。」
にべもなく返された言葉に思わず頭を上げる。
竜は真っ直ぐ俺を見ていた。
「どうして!?」
「出来ぬものは出来ぬ、それだけだ。」
突然の取り付く島もない様子に戸惑い、制御が乱れる。
「見ろ。そのような様では、完全な制御など到底無理な話だ。」
嘲るように言われ、感情が昂り魔力が膨れ上がる。
鍛えてやるなんて言っておきながら、手のひらを返した態度に、苛立ちのような感情が強く、戸惑いを塗り潰す。
「ほう、一応は押さえたか。だがこの程度で乱れるようでは話にならんな。所詮は孵ったばかりの赤子と同じか。」
竜はやれやれといった様子で首を振る。
「赤ん坊だって、成長して歩くようになるんだよ!」
さらに苛つく感情と魔力を無理矢理押さえ込むが、僅かに漏れた。
「大口を叩いてもその程度。聞いて呆れるわ。」
鼻で笑う態度に逆撫でされ、魔力がさらに乱れる。
…もういい、あんたなんて当てにしない。
「うるさい! そんなに気に入らないなら見なきゃいいだろ! 俺の精神からとっとと出てけよ!」
「言っただろう、制御を完全にするまでは、お前を留め置くと。今すぐ出ていけと言うならば、憂いを絶つ為に、お前には消えて貰おう。」
竜はそう言って、魔灯射ちの時の倍程の数の魔力弾を浮かべ、放った。
「くそっ! 結局こうなるのかよ!!」
その場を飛び退くと同時に、相殺するための魔力弾を打ち出すが、俺の魔力弾の威力が弱く、一対一では相殺しきれない。
走り回り、ぎりぎりで避けながら、追加の魔力弾を生成するが、込める魔力を増やしながらの作業に若干手間取ってしまう。
「ぐわっ!」
回避し損ねた一発が右足に当たり、衝撃で大きく吹き飛ばされた。
「あ゛っっ…、ぐっ、ぐぅっ。」
転がった先で反射的に起き上がろうとするが、足の骨が折れたらしく激痛に襲われた。
痛みで完全に動きの止まった俺に対し、竜は冷たく言い放った。
「我が血族の恥を世に出すわけにはいかぬ。これで終わりにしてやろう。恨むなら己を御せぬ自身を恨むがいい。」
言い終わると、俺の頭よりも大きな魔力弾を作り出した。
「っ!」
俺は魔力弾に込められた魔力を感じ、背筋に冷たい汗が流れる。
あれをまともに食らえば、俺は間違いなく消し飛ぶ。
精神が消滅したなら、二度と目覚めることはない。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
俺は全ての感情と魔力を一つにして放った。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




