目覚めの条件
俺は竜が把握している状況を詳しく聞いた。
森の異常については事態は終息し、話し合いも済んでおり、当初の問題の解決と今後の事について、二人が町へ報告に戻っている事。
ゼーンは目を覚まし一度住処へ戻った後は、親父さんと狩りや転移の練習をして過ごし、休む時は俺の傍らにいる事。
俺自身については身体の治癒は済んでいるが、魔力が完全に馴染むまでもう二日ほど掛かる事。
そして俺自身についてはもう一つ。
「え、俺が倒れてから二日しか経ってない? いや、流石に冗談だろ。俺の感覚にずれがあったとしても十日以上は確実に過ぎてるはず。」
聞かされた言葉が信じられず、冗談かと言葉を返すと、竜は否定した。
「冗談ではない。私が鍛練に使った魔法は時も引き伸ばす。まあ現実の時を引き伸ばす訳ではない、感覚だけのものだがな。よくあるだろう、長い夢を見たつもりが実際は然程の時が経っていなかったというあれだ。」
自分の感覚が夢と同じだと言われれば、実際精神の空間にいると認識できているのだから間違いではないのだろう。
先程は十日以上と控えめに言ったが、正直なところ精神で気が付いてから既に一月以上は経った感覚でいる。
そしてだからこそ焦っていたんだ。
だが、待たせている事に急いでも、焦る必要は無くなった。
「状況は理解した。で、俺の身体が起きられるようになるまで後二日ほど掛かるって事だけど…さっき言ったよな『魔力を完全に制御できるまでだ。』って。」
俺がそう言うと、竜は目を眇た。
「あれだけ感情を乱しながらも、聞いておったのか…。お前が魔力を完全に制御出来ねば、感情の昂りに魔力を溢れさせる。そうなれば今度はお前が大暴走の引き金となりかねん。」
言われた内容に衝撃を受ける。
「…俺が、…大暴走を…起こす?」
「そうだ。お前が目覚めたのは竜の血。当然魔力も竜の気配を纏う。そしてお前の血は濃い。例えそれが私の気配よりも薄くとも、竜の気配であることに変わりはない。そして薄い気配が糧と判断される事もある。そうなればお前の周囲を危険に晒す。故にお前が制御を完全にするまで、私がお前を精神の世界へ留め置く。」
戸惑う俺に竜は現実を突きつける。
魔力を完全に制御できなければ、一生現実で目覚めることは出来ない。
だが無理に目覚めて災厄を呼ぶくらいなら、眠ったままでいた方がいい。
でも俺は…。
「解った。俺に制御の仕方を教えて欲しい。頼みます。」
俺は竜へ頭を下げた。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




