事態の収拾 (side ジェミオ)
今回の魔力の拡散は、この場の結界の一部を弛めた際に、溜まっていた魔力が漏れ出したものだった。だがその魔力も大地に還されていて大暴走の危険は無い。
竜王はそう説明してくれた。
「不慮の出来事とは云え、既に対処いただき、安堵しました。ありがとうございます。」
“いや、対処したのは私ではない。故に感謝の言葉は受けとれぬ。”
大暴走の危険だけでなく、原因自体が無くなっていることに肩の荷が下り、事態の収拾に感謝を伝えると、否定の言葉が返ってきた。
竜王自身でないとするなら、では一体誰が…。そう考え、銀狼へと自然に視線が向いた。
“我が御方の御力を御せる訳がなかろう。”
そう云って、銀狼に呆れた眼差しを返された。
なおも疑問を浮かべる俺達に、竜王は答えを示した。
“それを成したのは血族の持つ剣だ。宿る守護の力により、漂う魔力を大地の守護の力へと還したのだ。”
そう云われ、ヴェルデの傍らにある剣を見る。
あの時の鈴の音でそんな事まで成してしまうとは、一体どれ程の力を秘めているのか。そう思っていた時だった。
ヴェルデと共に眠っていた子銀狼の耳がぴくりと動いた。
“どうやら幼子が目を覚ました様だ。”
竜王の言葉を聞きながら、子銀狼の様子を見つめていると、ゆっくりと瞼が開いた。
目を覚ました子銀狼は起き上がり、ヴェルデの頬を一舐めすると、籠から飛び降り大きく伸びをした。
“!…。”
無言のまま大きく尻尾を振る銀狼から喜びの感情が伝わってくる。
子銀狼は銀狼と数瞬向かい合ったあと、こちらを向いて座り直した。
何かあるのかと見つめているとその声が届いた。
“あのね、みんなのおかげで助かったよ。”
「ヴェルデが言ったのかな?」
甲高い子供の声に、アルミーが子銀狼へと問いかけた。
“うん。あともう少し掛かるけど大丈夫だって伝えてって。”
「そうか。…ありがとう、ヴェルデを助けてくれて。」
「俺からも礼を。大切な義弟を助けてくれてありがとう。」
俺とアルミーは、ヴェルデの言葉を伝えてくれる子銀狼へ、従魔契約を結んでまで助けてくれた事への感謝を伝えた。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




