強運 (side アルミー)
「あいつが助かって良かった。」
火を囲む静寂の中、ジェミオの溢した一言はまさに自分の心境だった。
一連の出来事と数多の感情を思い返し、思うこと、考えるべきことは沢山あるが、結局のところは“ヴェルデが助かった”それが全てだった。
「ああ、本当に。…一時はどうなるかと思ったよ。」
情報と気持ちの整理がつき、ほぅと息を吐く。
「たった二日だぜ。森の異常の話から、今ここでこうしているまで。その間にどれだけの事があったよ?」
立てていた膝を崩し、胡座で座り直したジェミオがまいったという顔をしてぼやいた。
「誠実胡桃の緊急採取の依頼に、子銀狼との遭遇、銀狼との邂逅、血の覚醒に、従魔契約、竜王への請願と対話といったところか。」
敢えて一つずつ挙げて答えると、ジェミオは渋面を作って言った。
「なあ、それだけの大事詰め込んで、終いにはあいつが竜王の子孫とか、どんだけ想像の斜め上行くんだよ。あいつ本当に星の気に障ることしたんじゃないか?」
「ははっ、庇ってやりたいところだけど、俺も今回は流石に疑いたくなるな。」
一つひとつですら、昔語りに吟われるような出来事。
他人に聞かされたなら信じられないような体験。
まるで幾つもの伝承を一纏めにしたような二日間だった。
「まあ、あいつが起きたら訊いてみればいいだろ。」
いつもの調子に戻ったジェミオが言う。
「そうだな。でもヴェルデの事だから、自分でも気付いてないって可能性もあるだろう。」
ヴェルデが慎重そうでいて、行き当たりばったりな行動の多い事を思い、俺もいつものように返した。
「あぁ、その可能性もあるか。いや…寧ろ、あいつに原因は無いのに、無駄に強い運で引き当てたってのが一番ありそうか…。」
ジェミオもヴェルデの色々を思い出したのか、思い至り納得したと言わんばかりだ。
「確かに、良くも悪くも強運持ちではあるな。結果として今回の目的をこれ以上は無い形で果たすことになるわけだ。」
森に広がっていた竜の魔力と、銀狼の予定外の出産とその後の経緯。
先程、大まかな事情を聞き、状況を整理すれば森の異常の原因は明らかで、今後の対応の方向性についても明日の対話でほぼ決まるだろう。
本当に偶然の重なりというより、強い導きに紡がれたような邂逅。
そしてそれらの全てが今回の目的の答えに繋がっているという事実。
本当にあらゆる意味で強運持ちな義弟だ。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




