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俺と魔剣(あいつ)の冒険譚  作者: アスラ
56/119

side ジェミオ

「どうだ?」


火の(そば)へ戻ってきて腰を下ろすアルミーに聞く。


「変わり無く、落ち着いてるよ。」

「そうか。お前も少し寝たらどうだ?」


安堵(あんど)した様子のアルミーも大分(だいぶ)顔色が良くなったが、疲労(ひろう)()()かんでいる(さま)に休むことを(すす)めるが、首を横に振った。


「いや、いい。今は眠れそうにない。」

「そうか。でも、あれだけ魔法を使ったんだ、無理するなよ。」

「ああ。流石(さすが)に疲れていないんて言うつもりはないさ。」


そう言ってアルミーは微苦笑(びくしょう)を浮かべた。


竜王(トニトルス)(ここ)へ来ることになった切っ掛けから、その後に起きた出来事の全ての経緯(いきさつ)を話し終え、竜王(トニトルス)が眠りについて(しばら)くして、ヴェルデの右半身に浮かび上がっていた(うろこ)が消えた。


それから少しの間、また何かあるかもしれないと二人してその場で様子を見たが、今度こそ本当に大丈夫そうだと、少し離れた場所で火を起こして休むことにした。


火を起こしてから(しばら)く、場には沈黙が降りた。俺もアルミーも一連の出来事と感情を整理するのに精一杯だったからだ。


今回は本当にまいった。

今日だけで何度(きも)が冷えたことか。


昨夜…と言っても随分(ずいぶん)前のように感じるが、予言(ゆめみ)の事を聞いて、ヴェルデに言った言葉(ほど)、軽く考えていた訳では無かった。

だが、実際に起きたことは想像を(はる)かに()えていた。


子銀狼(こフェンリル)との突然の再開から、銀狼(フェンリル)との邂逅(かいこう)。ヴェルデに眠っていた異種族の血の覚醒(かくせい)によって起こった体の崩壊。


苦しみと痛みにのたうちまわるヴェルデを抱き止めている間、手を離すことはヴェルデの命まで離してしまうようで怖くて(たま)らなかった。


アルミーの魔法の治癒(ちゆ)でも追い付かず、焦燥(しょうそう)(つの)らせる最中(さなか)子銀狼(こフェンリル)がヴェルデとその命運(めいうん)を共にするために自ら従魔契約を結んだ事は驚きとともに、少しだけ(うらや)ましいと思ってしまった。


俺には魔法適正が無い。正確には基礎(せいかつ)魔法と自身に反映する魔法しか使えない。だからランクAと言っても近接戦闘特化であり、アルミーのように他者に治癒魔法は使えない。


その事で今まで何度も悔しい思いをしてきたが、今日ほど無力を感じたことは無い。

子銀狼(こフェンリル)はまさに命懸(いのちが)けでヴェルデに寄り添っているのに、“助けられない”、その悔しさと苛立(いらだ)ちを思わずヴェルデの運命の一端(いったん)(にな)うであろう剣にぶつけてしまった。


「死を乗り越えるためにこの(こいつ)を手に入れたんじゃなかったのか!!」


まさか俺の叫びを聞いた訳では無いだろうが、ヴェルデの剣はその内に宿す魔力をもって、一時的にヴェルデの体の崩壊を止めた。


そして鈴の音を切っ掛けに状況が動き出し、“御方”と呼ばれる存在が力を貸してくれると、転移によって連れられた先には竜王(トニトルス)がいた。


()(すべ)の無かった俺達はヴェルデと子銀狼(こフェンリル)を助けて欲しいと懇願(こんがん)し、竜王(トニトルス)は魔法と自らの血を持って、その命を救い上げてくれた。


「あいつが助かって良かった。」


(こぼ)れ出た言葉が改めてヴェルデが生きていることを実感させた。



お付き合いいただき、ありがとうございました。

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