side ジェミオ
「どうだ?」
火の側へ戻ってきて腰を下ろすアルミーに聞く。
「変わり無く、落ち着いてるよ。」
「そうか。お前も少し寝たらどうだ?」
安堵した様子のアルミーも大分顔色が良くなったが、疲労が濃く浮かんでいる様に休むことを勧めるが、首を横に振った。
「いや、いい。今は眠れそうにない。」
「そうか。でも、あれだけ魔法を使ったんだ、無理するなよ。」
「ああ。流石に疲れていないんて言うつもりはないさ。」
そう言ってアルミーは微苦笑を浮かべた。
竜王へ森へ来ることになった切っ掛けから、その後に起きた出来事の全ての経緯を話し終え、竜王が眠りについて暫くして、ヴェルデの右半身に浮かび上がっていた鱗が消えた。
それから少しの間、また何かあるかもしれないと二人してその場で様子を見たが、今度こそ本当に大丈夫そうだと、少し離れた場所で火を起こして休むことにした。
火を起こしてから暫く、場には沈黙が降りた。俺もアルミーも一連の出来事と感情を整理するのに精一杯だったからだ。
今回は本当にまいった。
今日だけで何度胆が冷えたことか。
昨夜…と言っても随分前のように感じるが、予言の事を聞いて、ヴェルデに言った言葉程、軽く考えていた訳では無かった。
だが、実際に起きたことは想像を遥かに越えていた。
子銀狼との突然の再開から、銀狼との邂逅。ヴェルデに眠っていた異種族の血の覚醒によって起こった体の崩壊。
苦しみと痛みにのたうちまわるヴェルデを抱き止めている間、手を離すことはヴェルデの命まで離してしまうようで怖くて堪らなかった。
アルミーの魔法の治癒でも追い付かず、焦燥を募らせる最中、子銀狼がヴェルデとその命運を共にするために自ら従魔契約を結んだ事は驚きとともに、少しだけ羨ましいと思ってしまった。
俺には魔法適正が無い。正確には基礎魔法と自身に反映する魔法しか使えない。だからランクAと言っても近接戦闘特化であり、アルミーのように他者に治癒魔法は使えない。
その事で今まで何度も悔しい思いをしてきたが、今日ほど無力を感じたことは無い。
子銀狼はまさに命懸けでヴェルデに寄り添っているのに、“助けられない”、その悔しさと苛立ちを思わずヴェルデの運命の一端を担うであろう剣にぶつけてしまった。
「死を乗り越えるためにこの剣を手に入れたんじゃなかったのか!!」
まさか俺の叫びを聞いた訳では無いだろうが、ヴェルデの剣はその内に宿す魔力をもって、一時的にヴェルデの体の崩壊を止めた。
そして鈴の音を切っ掛けに状況が動き出し、“御方”と呼ばれる存在が力を貸してくれると、転移によって連れられた先には竜王がいた。
為す術の無かった俺達はヴェルデと子銀狼を助けて欲しいと懇願し、竜王は魔法と自らの血を持って、その命を救い上げてくれた。
「あいつが助かって良かった。」
溢れ出た言葉が改めてヴェルデが生きていることを実感させた。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




