一つに
「お前は血の目覚めによって、自身の有り様が変わってしまう事を恐れている。そうではないか?」
「…俺は…、…。」
突き付けられた言葉に、自覚していなかった事実を突き付けられる。…いや、そうじゃない。
解っていたんだ。
目覚めていく血の魔力に、変化する身体、精神の侵食、その全てが今の俺を塗り潰していくみたいで、俺が俺で無くなるのが怖かった。
そしてその怖さを認めてしまうと、現実となってしまいそうで気付かないふりをしたんだ。
「その恐れが自身の魔力を異質な存在にしているのだ。お前は自身を統べねばならん。そしてお前は魔力を統べる事がどういうことであるか知っている筈だ。」
「魔力の制御は精神に依る。強き意思のみが存在する魔力を統べる。」
男の確信を持った言葉に、自然に文言が零れ出る。ギルド長とリュネさんに叩き込まれた言葉だ。
二人は俺に教えてくれた、
魔力とは自身の内外に関わらず存在し、制御の対象もまた同じ。
魔力の制御とは強き意思で内外の魔力を従えること。
「であれば、すべき事など自ずと分かろう。例え竜族の血であろうとも、根本は変わらぬ。そもそも身体の制御など己の感覚で行うもの。赤子ですら教えずとも身体の動かしかたは己で勝手に身に付ける。」
なんだか気になる言葉があった気がするが、先程「赤子並み」と言われたのはこのことかと理解すると同時に、言われてもしょうがないと思ってしまった。
「全ては己の想い一つ。お前が望み信じるままに己を統べよ。」
男はそう言うと不敵に笑った。
唐突に現れた時にはそれどころじゃなかったが、こうして話していると不思議と馴染んでしまっている。
“大丈夫だ”と男の声無き言葉に背中を押され、俺は自分と向き合う。
怖かったのは想いを失くすこと。
皆から貰った想い。
俺の皆への想い。
変化してそれらが消えてしまう事が怖かった。
でもそうじゃないんだ。
俺は大切な人達を守りたい。
俺を想ってくれる人達に応えたい。
優しい大好きな人達と、大事な幼馴染みと、一生を繋いだ相棒と一緒に、俺は俺として生きていたい。
血の目覚めは生きるため。
その為の魔力。その為の変化。
想いを背負い、想いを抱き、星に還る其の時まで俺が俺として生きる為に必要な力。
湧き上がる魔力だけでなく、流れる魔力に想いを乗せる。別々の有り様だったものが漸く一つに混じり合う。
強い光が産まれ、瞑っていた視界を白く染めた。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




