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俺と魔剣(あいつ)の冒険譚  作者: アスラ
51/119

指摘

「やれやれ、未熟(みじゅく)どころか、(かえ)ったばかりの赤子(あかご)並みか。」

「え、誰?」


反射的に問いかけた俺に、男は(あき)れた眼差(まなざ)しを向けて言った。


「私が何者かを気にするより先に、まずは己の身をどうにかするべきだろう。」


いや、気になるだろ?

ここは俺の精神(こころ)の中だよな?

ゼーンは契約したからだって解るけど、そんなに誰でも入れるもんか? 

それとも俺が心を開き過ぎの、来るもの拒まずなのか?

己の身をどうにかしろって、何とかしようとしてたら突然あんたが(ひと)精神(なか)に現れたんだろう!?

大体どうにかするべきって言われても、どうしたらいいか判んないから困ってんだよ!

って言うか、なんで知らない他人(やつ)が勝手に入っ()てきて、「未熟」だの「赤子並み」だの上から言いたい放題してんだよ!?

こいつ本当に誰だよ!?


「ちょっとしっかりして、ヴェルデ。混乱してるのは分かったから、少し落ち着こう。」


ゼーンに足を尻尾でぺしぺしと叩かれ我に返る。次々に起こる出来事に翻弄(ほんろう)され続けて、相当(そうとう)鬱憤(うっぷん)()まっていたらしい。

つい心の中で盛大(せいだい)に突っ込んでしまった。


「ヴェルデ、残念だけど全部聞こえてたから。」

「え?」

「ここって、精神(こころ)の中だからね。相手に対して伝えようとした言葉は全部聞こえるから。」

「…、…、…。」

「うわ、ヴェルデ、しっかりして! 鱗が!!」


思わぬ事実を聞かされ思考が真っ白になる。

身体(からだ)の変化に抵抗する意思すら瞬間的に()(つぶ)してしまい、ゼーンの声に(あわ)てて(あらが)う意思を(ふる)い立てる。


あっ、危なかった。

うっかり思考を飛ばしてしまった。


「お前、この状況下(じょうきょうか)でそれだけ余所事(よそごと)を考えられるのなら、己の身体(からだ)掌握(しょうあく)することなど簡単だろう。」


男が俺たちのやり取りを見て、何とも言えないといった表情で言った。


「だから、その方法が判らないんだって。俺の盛大(せいだい)な突っ込み聞いてたんだろ?」


思いきり言いたいこと言って、一度頭の中を真っ白にしたお陰で、すっきりした俺は自然に言葉を返していた。


「…ふむ。お前、起きている変化と湧き上がっている魔力、自分の(もの)だと思っていないな。」


は? 何を言ってるんだ?

男の言葉が理解できない。

俺の身に起きた変化で事実死にかけてすらいるのに、自分の事だと思っていないなんてそんなわけ…


「理解できないといった顔をしているな。

ではこう言えば解るか? お前はこの変化を恐れている。」

「!!」


俺の表情を見て改めた言葉に俺の心音が大きく響いた。




お付き合いいただき、ありがとうございました。

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