指摘
「やれやれ、未熟どころか、孵ったばかりの赤子並みか。」
「え、誰?」
反射的に問いかけた俺に、男は呆れた眼差しを向けて言った。
「私が何者かを気にするより先に、まずは己の身をどうにかするべきだろう。」
いや、気になるだろ?
ここは俺の精神の中だよな?
ゼーンは契約したからだって解るけど、そんなに誰でも入れるもんか?
それとも俺が心を開き過ぎの、来るもの拒まずなのか?
己の身をどうにかしろって、何とかしようとしてたら突然あんたが俺の精神に現れたんだろう!?
大体どうにかするべきって言われても、どうしたらいいか判んないから困ってんだよ!
って言うか、なんで知らない他人が勝手に入ってきて、「未熟」だの「赤子並み」だの上から言いたい放題してんだよ!?
こいつ本当に誰だよ!?
「ちょっとしっかりして、ヴェルデ。混乱してるのは分かったから、少し落ち着こう。」
ゼーンに足を尻尾でぺしぺしと叩かれ我に返る。次々に起こる出来事に翻弄され続けて、相当鬱憤が溜まっていたらしい。
つい心の中で盛大に突っ込んでしまった。
「ヴェルデ、残念だけど全部聞こえてたから。」
「え?」
「ここって、精神の中だからね。相手に対して伝えようとした言葉は全部聞こえるから。」
「…、…、…。」
「うわ、ヴェルデ、しっかりして! 鱗が!!」
思わぬ事実を聞かされ思考が真っ白になる。
身体の変化に抵抗する意思すら瞬間的に塗り潰してしまい、ゼーンの声に慌てて抗う意思を奮い立てる。
あっ、危なかった。
うっかり思考を飛ばしてしまった。
「お前、この状況下でそれだけ余所事を考えられるのなら、己の身体を掌握することなど簡単だろう。」
男が俺たちのやり取りを見て、何とも言えないといった表情で言った。
「だから、その方法が判らないんだって。俺の盛大な突っ込み聞いてたんだろ?」
思いきり言いたいこと言って、一度頭の中を真っ白にしたお陰で、すっきりした俺は自然に言葉を返していた。
「…ふむ。お前、起きている変化と湧き上がっている魔力、自分の事だと思っていないな。」
は? 何を言ってるんだ?
男の言葉が理解できない。
俺の身に起きた変化で事実死にかけてすらいるのに、自分の事だと思っていないなんてそんなわけ…
「理解できないといった顔をしているな。
ではこう言えば解るか? お前はこの変化を恐れている。」
「!!」
俺の表情を見て改めた言葉に俺の心音が大きく響いた。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




