耐え抜いた先
荒ぶる魔力を少しずつ手繰りながら、本来の魔力を馴染ませる事を始めて、どれ程の時間が経ったのか。
ここは精神の空間だ。時間の感覚は有って無いようなもの。まして生身の身体が無いのだから、疲労しているのは精神の筈なのに、まるで実体を持っているかのように汗が流れ、身体が重い。
魔力を掴む手は痺れるように痛み、指先の感覚は触れているのが辛うじて判る程度しかない。
「ヴェルデ、すこし休んだら?」
汗だくになって作業を続ける俺の肩口からゼーンが心配そうに言う。
「ゼーンこそ、疲れたなら休んでいいんだからな。」
「ヴェルデの魔力を使ってるだけだから、オレは全然疲れてないよ。それよりヴェルデが休まないと、包んでる魔力がさっきより薄くなってる。」
ゼーンが言う通り、俺自身の魔力が制御しきれなくなってきたのか、枯渇しそうなのか、纏う魔力が段々と薄くなっている。
休んで回復した方がいいと俺自身も判ってはいるんだ。
だが、そうしたくても出来なかった。
「正直、休まないと不味いだろうとは判ってるんだけどな。今、掴む手を離したらもう一度掴み直すのは無理だ。それどころか、あっちの魔力が一気に流れ込んで俺達は呑み込まれる。」
「でも、このままじゃ…。」
揺れるゼーンの瞳を見て続くだろう言葉を紡ぐ。
「ああ。このままじゃ、俺の魔力が尽きれば同じだ。現状の均衡を維持出来なくなった時点で俺達が呑み込まれるのは変わらない。」
俺は感覚が朧気な指先に力を込める。
ゼーンが俺の魔力を繰り、纏わせる。
「だから耐えるしかないんだ。」
俺の魔力が馴染むか、均衡を覆せるだけの切っ掛けが起こるまで。
「ゼーンの親父さんがいる。ジェミオとアルミーも手を尽くしてくれてるんだ。大丈夫。俺達なら耐えられる。」
「うん、がんばろう! ヴェルデ!」
三度気力を奮い立たせ、手繰り続けて暫く、その時は訪れた。
不意に足元から風が巻き起こる。
同時に足裏から熱い魔力が身体全体へと染み渡り、あの剣を初めて抜いた時のように、自然に馴染んでいく。
「初めて感じる魔力だ。でもヴェルデの魔力にちょっと似てる。」
「…身体が軽くなった。」
先程まで重だるかった身体が嘘のようにすっきりとして、疲労感が消えている。
感覚を無くしていた指先にも温かな魔力が行き渡り、掴む力が戻ってきた。
俺の本来の魔力が活性化し、沸き上がってくる。
「ヴェルデ、今だよ!」
「判ってる。今なら全魔力を纏めて掴める!!」
ゼーンの声に、俺は沸き上がる魔力を、掴んだ先の魔力へと一気に流し込んだ。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




