二つの魔力
伸ばした手の先が、ふわふわと流れる魔力にそっと触れる。この馴染み深い感じは間違いなく俺の魔力。
触れた魔力は意図するままに指先から手首へふわりと絡み、腕を伝い全身へと纏い広がっていく。
「この優しい感じのするヴェルデの魔力、オレ大好きだ。」
そう言って軽く跳んだゼーンが、器用に俺の肩に乗る。
「おい、ゼーン。」
「大丈夫。落ちたりしないよ。それより見てて。」
落ちたら危ないと言う前に「大丈夫だ」と言うゼーン。実際に体が小さいこともあってか、危なげなく乗っていた。
そして目の前で俺の魔力を操り延ばし、その小さな体と俺とを繋ぐように魔力を纏っていく。
「…本当に俺の魔力を操れるんだな…」
「だから言っただろ。信じてなかった?」
俺の魔力を容易く意のままに操るのを見て思わず溢した言葉に、ゼーンが心外だと言わんばかりの声音で返す。
なので、俺は思ったことをそのまま伝えた。
「いや、ゼーンの言うことは信じてたさ。それでもいきなりこんなに上手く使えるとは思ってなかったから驚いたんだ。」
「そっか。本当のところ、ヴェルデが俺のことを受け入れてくれてるから、一切の反発もなく簡単に使えるんだ。これならオレも手伝えるだろ?」
「ああ、俺自身より扱えてるかもな。頼りにさせてもらうよ。」
納得したゼーンが誇らし気に言うのを聞いて、励まされた俺は気合いを入れ直す。
「ゼーン、今からこの先にある変化途中の魔力に手を延ばす。掴んだら一緒に俺の魔力を少しずつ纏わせていくんだ。」
「わかった。」
「じゃあやるぞ。」
先程より慎重に、暗闇の先にある魔力へと手を延ばした。
「うわっ!」
衝撃に慌てて手を引く。
結界を抜ける時のような微かな抵抗を越えた途端、轟々と荒れ狂う魔力に手の先を持っていかれるように感じて、咄嗟に手を引いてしまった。
「大丈夫?!」
「っ、ああ。大丈夫だ。思った以上に勢いが強くて驚いただけだ。」
ゼーンに答えつつ、思わず眉をしかめる。
「あれは大分厳しそうだ。ゼーン、俺があの魔力を掴んで持たせるから、纏わせるのは任せていいか?」
「うん、任せて!」
「じゃあ、もう一度やるぞ。」
俺は纏う魔力を強く意識しながら、先とは異なり勢いよく手を魔力へと突っ込んで、その流れの一部を握りしめた。
「っ、くっ。」
まるで地面に立ったまま、暴れる馬の手綱を掴んでいるような衝撃に息が漏れる。
元は俺の魔力の筈なのに、俺の意思は全くもって受け付けない、とばかりに荒れ狂う魔力は引き寄せるにも簡単にはいかず、ここはは精神の世界であるのに全身に汗が流れる。
まあ、だからって最初っから躓いてちゃ、可能性も何もあったもんじゃない。
俺は歯を食い縛り、魔力を掴む拳を少しずつ引き戻した。
引き続けた拳が漸く結界のようなものの内側へと入る。
境を越えると、ほんの僅かだが暴れる魔力の抵抗が軽くなった。
「っ…よし…ゼーン頼む!」
「うん!」
俺が掴む魔力を少しずつ手繰るように流すのに合わせて、ゼーンが俺の魔力を沿わせるように纏わせていく。
俺は大地に雨が染み込むように、纏わせた魔力が変化する魔力に馴染むのを強く意識しながら、掴む魔力を手繰り続けた。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




