可能性の模索
「ちょ、ヴェルデ。いつまで揉みくちゃにするんだよ!」
ゼーンがしつこく撫で回す俺の手を軽く咬み、抗議の声を上げる。
「ははっ、悪い。心地よくて止まらなくなった。」
「もう、そんな場合じゃないだろ!」
「ああ、真面目に考えるよ。」
ゼーンに想いを伝え、柔らかな毛を存分に撫で回して満足した俺は再び思考に戻る。
変化の強さに抵抗する方法は?
…それ以上の力がないと無理だ。
変化に適応させる?
…それが出来ないからこの状況なんだ。
適応できるように変化させる?
…変化するための要因が無い。
抵抗も、適応も、変化も、そうするだけの力が今の俺には無い。
考えろ。
諦めるな。
最後まで生き足掻くんだ。
思い出せ。
俺に出来ることは?
あの竜の魔力を宿した剣が助けてくれるというなら、それだけの可能性があるはずだ。
白銀の剣を思い浮かべると、親父さんとのやり取りを思い出す。
「儂の目を疑うのか? お前ならこの剣を使える。剣とお前の魔力が馴染んでいるのが何よりの証拠だ。」
…魔力が馴染む…。
「そうか! 馴染ませる! 魔力制御だ!」
「魔力制御? それでヴェルデの身体が強くなるの?」
俺の言葉にゼーンが首を傾げる。
「いきなり強くはならないけど、溢れる魔力の流れを少しでも制御して、変化の勢いを弱めることは出来るはず。」
「でも、もし失敗したら今度こそ死んじゃうよ?」
不安を覚えたゼーンが擦り寄ってくる。
「このまま何もしなければ状況は変わらない。生きたいと思うなら、今の最善だと思えることを全力でやるしかないんだよ。それに魔力の制御は精神による。ギルド長やリュネさんに散々叩き込まれたんだ。出来ないなんて言えるかよ。」
俺はゼーンの瞳を見て、不敵に笑った。
「そっか! じゃあオレも手伝う。契約したからオレもヴェルデの魔力使える!」
嬉しそうに瞳を輝かせ、尻尾を振りながら言った。
「ああ、それじゃ、やるぞ。補助頼むな。」
「うん!」
そして俺は集中を始めた。
正直上手く行くかは判らない。でも他に手が浮かばない以上、やってみるしかない。
やがて意識を失くす前に身体で聞いた、暴れるような心音と、轟々と荒れ狂う濁流のような魔力の音が聞こえてくる。
少しして感じた自身の魔力の気配にそっと手を伸ばした。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




