諦められない
温かい光に包まれた後に何が起きるのかと身構えたが、俺とゼーンの体が淡く光り続けているだけで何も起こらない。
「この感じ…これってあの剣の魔力か? 転生の準備とか?」
「魔力はそうだけど。ちがうよヴェルデ。ヴェルデはまだ生きてる。あの剣が体が壊れるの、止めてくれてるんだ。」
「え、生きてる?」
呆然と聞き返した俺に、ゼーンは頷いた。
一呼吸置いて、俺はゼーンを抱き締める力を僅かばかり強めると、温かな毛に顔を埋めた。
そして、そのまま呟く様に言葉を溢した。
「俺、さっきまで体がバラバラになるんじゃないかってぐらい痛くて、苦しくて、血まで吐いたから、てっきり死んじまったのかと思ってた。そっか…生きてんのか…」
俺がそう溢すと、ゼーンが身動ぎをした。柔らかな温もりから顔を上げると、ゼーンが困ったような顔でこちらを見て言った。
「ほっとしてるヴェルデには悪いんだけど、まだ完全に助かった訳じゃないよ。」
「えっ、そうなのか?」
「本当はオレが助けたかったんだ…。でもオレの力じゃ足りなくて…。それでも一緒にいたくて、助からないとわかってて契約したんだ。」
俺と契約した時点で助からないって分かってた…そのうえで、まだ生きてるってことは…
「…じゃあ、いずれは死ぬってことか…」
「剣の魔力が失くなって、そのまま放って置かれたらそうなる。でも、ヴェルデの持ってたあの綺麗な剣がヴェルデを助けようとしてくれてるんだ。とと様もヴェルデと一緒にいた人族もこのまま諦めたりなんてしないよ! だからきっと大丈夫。」
ぽつりと言った俺の言葉にゼーンが必死で励ましてくれる。
そしてあの剣を手にした理由を思い出す。
リュネさんからの夢見と親父さんとの約束、ギルド長やアルサドの励まし、ジェミオとアルミーの想いを貰って、死に抗う為にこの剣を選んだんだ。
“生きる”事を諦められない。
あの時、彼女に繋いで貰った“生きる”事を望まれた命。
何より、ゼーンと一緒にこれから“生きて”行くために、諦める訳にはいかないんだ!
「ははっ。ごめんゼーン。大事なこと忘れてたよ。まだお前と契約したばっかなんだ。これから一緒に世界を見て回るためにも、諦める訳にはいかないよなっ!!」
「ヴェルデ……うん! オレも手伝うから!」
俺が気力を取り戻したのを見たゼーンが嬉しそうに返した。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




