事情(side アルミー)
ヴェルデの体に顕れた鱗を見て、動揺が走る。
「これは鱗…血が目覚めるって言うのは、まさか竜に!?」
「竜王よ! 先程ヴェルデに飲ませたものは何なのですか!?」
ジェミオと同様に信じたくない考えが浮かび、竜王へ問う。
“落ち着け。飲ませたのは私の血だ。先程までは急激に増加する魔力に、自身を馴染ませることが間に合わなくなった為に体が耐えられなくなっていたのだ。純粋な竜の血を与えることで体を強化し、体と魔力の変化への耐性を持たせたのだ。鱗は体を強化した影響で一時的に顕れているに過ぎん。”
滔々と説明を受けて、ジェミオと二人で息を吐く。
次から次へと本当に心臓に悪い。
“変化が落ち着き、血と魔力に馴染むまではこの者が目覚めることはない。もう日も暮れる。何もない場所だが貴殿等も休むがいい。
そう云われて空を見上げると黄昏の色が見える。
この場所は魔法でも掛かっているのか、ぼんやりと明るく、状況が状況だっただけに今の今まで陽の高さなど意にも介していなかった。
だが時間の経過を認識した途端、自身が酷く疲労していると感じた。
“御方、このような事態を招いておいて大変心苦しいが、一度番の元へ戻りたく。陽が昇る頃、今一度この神聖な場への道を繋ぐことをお許し願いたい。”
“そのように気に病むことはないと云うのに。奥方の事は心配であろう。この子は私が預かる故心配はいらぬ。道もいつでも繋げられるようにしておく。早く奥方の元へ帰ってやるがいい。”
銀狼が頭を下げながら云うと、竜王は好々爺然とした様子で答えた。
“幾度ものご厚意に感謝申し上げる。”
改めて礼を云うと銀狼は転移して行った。
“貴殿等には申し訳ないが、あの銀狼の番の産後の肥立ちが悪くてな。許してやってくれ。”
竜王の言葉にジェミオと顔を見合せた。
「そんな事情が…ではやはり銀狼殿はこの森に定住されるということか…」
“いや、そんな話は聞いておらぬぞ?”
ジェミオの呟きを竜王が否定した。
「そうなのですか?」
“ああ。元々あの者達は里に戻る途中、奥方の体調が思わしくない故にこの森で休むだけのはずだったのだ。だが私の用意した結界の中で産気付いてしまってな。どうにか無事に子が産まれたが、奥方の体調が戻らぬため、そのまま養生しておるのだ。”
「…そうですか…」
訊くと、竜王が銀狼の事情の詳細を語ってくれた。
子銀狼の事もある。状況的にすぐに移動するというのは無いだろう。住み着いた状況での対応が必要になるということだ。
“ふむ。そういえば、このような状況になった経緯を聞いていなかったな。貴殿等、聞かせてくれんか?”
考え込む俺達に竜王が訊いてきた。
そういえば、ヴェルデを助けることで一杯になってこれまでの話は一切していなかったと、今更ながらに気づく。
「我々の本来の目的はこの森で起きていた異変の調査です。」
ジェミオと俺はガルブの森へ来た本来の目的から、今までの経緯を話した。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




