もう一人の幼馴染み
「頑張ってるフィオなら、きっと出来るよ。」
声のした方を向くと、リーリィと同じ受付係のホリーがいた。
「ああ、もちろん次は勝つ!」
フィオは掌を握り締めそう返した。
「ホリー、もういいの?」
「はい、ちゃんと休んだので大丈夫です。」
気遣うリーリィにホリーは微笑んで答える。
相変わらず見ていると安心する笑顔だ。
彼女も俺の幼馴染みで歳は一つ下だ。十五歳になった二年前からギルドで働いている。
どうやら完了手続きの混雑を終えて、休憩を取っていたらしい。
「ヴェル、手続きするから見せて。」
ホリーに言われて読取魔具に腕輪をかざす。ホリーは表示された情報、依頼内容と納品の査定結果を確認した。
内容に問題がないことを確認すると、カウンターの奥へ行き、契約報酬の入った皮袋を手に戻って来る。
「はい、報酬。今回も薬草の状態が良かったって。」
「そうなるよう採ってるからな。」
「それが当たり前のように出来るのが凄いんだよ?」
そう言って皮袋を渡してくれたホリーは、自分の事のように嬉しそうにしている。
フワフワとした雰囲気で冒険者達にも人気の彼女だが、怒らせると大変なことになるのは俺とフィオが誰よりも知っている。
「ヴェル、変なこと考えてない?」
そして彼女は勘も良い。
「いいや、今日剣が折れたんで、新しい剣にいどのくらい回せるかなぁって考えてた。」
バレたら大変なことになる。
とっさに思考を切り替えて答えた。
新しい剣の事も気にしていたのは事実なので、大丈夫だろう。
「え、剣が折れたって…お前何やってんだよ。」
俺の言葉にフィオが呆れたように言う。
「猪の討伐記録あるけど、これ?」
ホリーが改めて読取魔具を見て不思議そうに聞いてきた。査定が終わらないと討伐対象の名前しか記録されないので、普通の猪だと思っているのだ。
「そう、出たのがちょっと大物でさ。仕留めた後、抜こうとしたらポッキリ逝った。」
「もう、また無茶な使い方したんでしょ。ヴェルはいつもそうなんだから。司祭様も私も、無茶しちゃ駄目だっていつも言ってるでしょ。」
別の意味で大丈夫じゃなかった。
軽く流すつもりが、小言の神が降臨されたらしい。
こうなると暫くは解放していただけない。
フィオはさりげなく距離を取り、知らぬ顔をしている。薄情者と言いたいが、逆の立場なら間違いなく同じことをするのでしかたない。
「ヴェル、ちゃんと聞いてる?」
「あぁ、聞いてる。」
夕食が恋しくなっているのが分かったのだろうか。
とりあえず不可抗力と言うことで解放して欲しい。
「ホリー、もうその辺にしておきなさい。ヴェルが空腹で倒れるわよ。」
ホリーの小言を聞き流していると、リーリィが取り成してくれた。と同時に、俺の空いた腹も悲しげに鳴いた。
「その、無茶しないように気を付けるからさ。」
苦笑しながら言う俺を見て、ホリーは大きな溜め息をついた。
「もう、本当に気を付けてよ。」
そう言うと、やっといつもの笑顔に戻ってくれた。
解放された俺はリーリィに目礼すると、早々にフィオと食堂兼酒場へ移動した。
まわりの連中に声をかけられ、挨拶を返しながらテーブルに着くと、フィオに酒を一杯だけ奢り、漸く夕食にありついたのだった。
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