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俺と魔剣(あいつ)の冒険譚  作者: アスラ
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夜食

水を汲んで戻ると、干し草を()んでいる馬達の側に置いてやる。馬達は待っていたとばかりに飲み始めた。


「お前達、今日は頑張ってくれてありがとうな。」


その体を撫でてやりながら馬の様子を見る。三頭とも落ち着いた様子で、どこにも異常は無いようだ。

問題ないことを確認した俺は、火のそばで待つ二人のもとへ向かった。


「ヴェルデ、お疲れ。」

「水やり終ったよ。馬達は問題なさそうだ。」

「んじゃ、俺達も飯にするか。」


火の側に腰を下ろすと、腕輪(バングル)からパンと干し肉と乾燥させた(くず)野菜、そして器を取り出す。

器に干し肉と乾燥野菜を入れ、目の前で沸くお湯を注いで暫く置いておく。するとふわりと食欲をそそる香りがしてきた。


「お、なんだ? いい匂いだな。」

「香草なんて準備してたのか?」


それぞれが薬草茶(おちゃ)具挟みパン(サンドイッチ)を手に食べ始めていた二人が、匂いに誘われたように声を掛けてきた。


「いや、この香りは干し肉から出てる。俺の野宿のご馳走だ。仕入元は教えられないけど、二人とも食べてみるか?」


そう答えると、干し肉を二枚取り出して渡す。


「へえ、こっちは更に旨そうな匂いだな。」

「多種の香草が使われているみたいだね。手間をかけてるのが香りで判るよ。」

「「………」」


そう言って一口食べた二人は無言になった。

俺は黙ったまま干し肉を噛み締めている二人を横目に、いい感じに戻ったスープを飲んだ。


うん、旨い。やっぱりおっちゃんの干し肉は最高だな。


「旨いだろ。その干し肉(それ)。」


今だ無言の二人に声を掛けると、(ようや)く飲み込んだ二人は真剣な目をして俺を見た。


「「おい、これ何処で売ってる!?」」


二人とも掴みかからんばかりの勢いだ。

その気持ちよく解る。かつての俺もそうだった。


「さっきも言ったけど、仕入元は言えない。っていうか、これ売り物じゃないんだよ。ある人が自分用に作ってる秘蔵品を、無理言って分けてもらってるんだ。」


そう言うと、二人はあからさまにがっくりと肩を落とした。


「そうか、売り物じゃないのか。」

「あ~、この干し肉があれば夜営が楽しみになるどころか、待ち遠しくなるのになぁ。この旨さなら銀貨払ってもいいぞ。」

「でも、売れば儲かるだろうに、何故商売にしないんだ?」


心底悔しそうに言うジェミオの横で、アルミーが疑問を口にする。

それに俺は苦笑混じりで答えた。


「俺もその人に訊いたよ。『なんで売り物にしないんだ?』って。そしたら、『カミさんに内緒で作ってるから、バレたら不味いんだ。それに売り物にしちまうと、自分が食べられなくなるから駄目だ。』だってさ。」


二人は俺の話に目を丸くし、笑いだした。


「ははっ、それならしょうがねぇな。何処の旦那も奥さん怒らせたら大変だからな。」

「ふふっ。確かに売り物に手を出せば間違いなく怒られるな。うん、それならしょうがない。」


町で度々見かける夫婦のやりとりを思いだし、二人は納得した。


「ヴェルデ、その人がもし売りに出す気になったら俺に教えろよ。そんときゃ絶対に買いに行くからな。」

「俺にも連絡を頼むよ。」

「ああ、分かった。でも俺の分を確保した後でな。」

「ったく、ちゃっかりしてるよ。」


多分に願いのこもった二人の言葉に、俺は快く返事をした。


   ◇ ◇ ◇


「で、お前何があった?」


食事を終え一息ついて、そろそろ見張りを決めて休もうかといった頃、ジェミオが切り出した。


「えっ? 何の話しだ?」


突然の話しに驚いて返すと、ジェミオとアルミーは小さく息を吐いた。


「お前、何か面倒なこと起きてるだろう。聴いてやるから話せ。昼間あった時から、時折思い詰めた表情をしたと思えば、無意識だろうがいつも通りを(よそお)うとして、感情の振り幅がお前にしてはあり過ぎる。」

「俺達には何も出来ない事かも知れないが、吐き出すだけでもちょっとは楽になるだろう? だから話してみな。」


二人は真剣なそれでいて心配する()で俺を見る。

隠したつもりでいたけど、知らないうちに出ていたらしい。そして二人は気付いていて今まで見守ってくれていたんだ。


本当に、俺の周りは優しい人ばっかりだ。




お付き合いいただき、ありがとうございました。

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