素材買取所
12/31 薬草名の表記を変更しました。
黄昏の空の下、町に戻った俺は顔馴染みの人たちと挨拶を交わしながらギルドに向かった。
とはいっても、町の門からそれほど離れてはいない。
ギルドの建物に近づくにつれ、中の喧騒が外にまで聞こえてくるが、いつものことだ。依頼を終えた連中が、飲んで盛り上がっているんだろう。
裏口へまわり奥の素材買取所へ向かう。
ここでは採取したものや、狩った獲物の査定や解体をしてくれる。まあ解体料は買取金額から差し引かれるが。
「よう、ヴェルデ。今日は遅かったな。」
カウンター越しに、黒い短髪で目元に傷のある厳つい男、アルサドが声をかけてきた。
俺は腕輪に触れ、薬草の入った皮袋を四つ出した後、カウンターにある読取魔具に腕輪をかざした。
俺が着けている腕輪はギルド登録時に支給されたもので、特殊な水晶が嵌め込まれている。
この水晶に個人の血と魔力を記憶させる事で本人である証明ができ、収納物は基本本人にしか取り出せなくなる。そのうえギルドに登録した情報や、討伐対象等が記録される冒険者証にもなっている。
読取魔具は水晶の情報を表示させたり、新たに記録するための魔具だ。
「ああ、採取の依頼に行ってたんだが、森を出ようとしたところで猪に出くわした。」
「ほう、蕺草に瘡王草、疼取草に黄烏瓜の実か。相変わらず状態がいいな。それにしても猪と遭遇なんて、そいつは災難だったって言うとこだが……お前以外のランクのやつならな。」
薬草を確認しながらアルサドが面白いことを聞いたという声音で言う。
冒険者のランクは未成年のFを除いて、E新人、D一人前、C中堅、Bベテラン、A一流といった具合に、実力に応じてランク分けされている。
さらにこの世界に数人しかいない、人外や英雄なんて呼ばれる超一流がいるらしいが、生憎とお目にかかった事はない。
そして俺の冒険者ランクはC。
世間では中堅と言われるランクだが、周囲の上級者からはB級も見えてるんじゃないかと言われてる。
要するに、猪程度は俺の技量なら余裕と判断されてる訳だ。
「まあね、おかげで予定外の収入に感謝だよ。かなりの大物だ。」
そう返しながら、査定が終わったところで再び読取魔具に腕輪をかざし査定結果を記録すると、改めてカウンター横の素材置き場に大猪の巨体を取り出した。
「こいつぁ、でかいな。三百トラムはあるんじゃないか? お前、いくら腕があるって言っても、あんまり奥まで独りで行くなよ。」
アルサドが驚いた後カウンターから出てきて、先程と変わって注意してくる。
それと言うのもガルブの森は広大で、奥へ行くほど強い魔物に遭遇しやすくなる。
森の外縁で遭遇する猪の大きさは精々酒樽一つ分程だ。荷車程の大物を目にすることは滅多にない。
なのでアルサドは俺がいつもの外縁より奥へ入っていたと思ったのだ。
「いや、奥には行ってないよ。いつもどおり外縁で採取してたら大猪が突っ込んできた。」
「…そうか。これ程の大物だったとは。遭遇したのがお前で良かったと言うべきか。それで大猪はどうする?」
アルサドは俺の話に何か思うところがあったようだが、すぐに表情を緩めそう言った。
「いつも通り、魔石以外は買い取りで。受け取りは明日以降で頼むよ。もう、腹減っちゃってさ。」
任せとけ、というアルサドの返事をもらい俺は受付へ向かった。
お付き合い、ありがとうございました。




