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俺と魔剣(あいつ)の冒険譚  作者: アスラ
11/118

side カンセル 2

奥にある武器庫(そうこ)に入ると、一番奥の棚にある箱の中から布に包まれた一本の剣を取り出す。

これは(わし)の友が鍛え上げた渾身(こんしん)一振(ひとふり)

小僧(やつ)がもう少し経験を積んでから(すす)めてやろうと思っていた。


だが、今必要なのだろう。


戻って目の前に剣を置くと、小僧(やつ)の目はその威容(いよう)に吸い寄せられ、釘付けになった。


漆黒(しっこく)(さや)には月桂樹(ローリ)加密列(カモル)が彫り込まれており、名誉と、逆境の際に振るう者の力になるようにとの想いが刻まれている。


「手にとって抜いてみろ。」


言われた小僧(やつ)はそろそろと手を伸ばし剣を取ると、そっと(さや)から抜いた。


剣の存在感(ちから)に一瞬息を詰めながらも、無意識に魔力を流し、お互いの存在を馴染ませて行く様子に安堵(あんど)すると共に、自身の事のように誇らしく感じる。


「やはり馴染んだか。」


だが小僧(やつ)は我に返ると戸惑った様子で訊いてきた。


「親父さん、この剣は一体。」

「この剣は神鉱(ミスリル)竜骨(りゅうこつ)で出来ている」

「……は?」


()えて素材で答えてやると、小僧(やつ)(ほう)けて言葉を無くした。

珍しい様子に素知(そし)らぬふりをして、さらに詳しく素材の説明をしてやると、状況に理解が追い付いてこないのか、口をぱくぱくと動かすが言葉にならず、(しま)いには黙ってしまった。


(ようや)く話したかと思えば、何故この剣を出したかと訊いてくる。お前が望んだからだと答えてやれば、自分には荷が勝ちすぎると返してきた。


(わし)の目を疑うのか? お前ならこの剣を使える。剣とお前の魔力が馴染んでいるのが何よりの証拠だ。」


そう言ってやると、昔、儂が初めて返事をしてやった時と同じ表情(かお)をした後、大きく息を()いた。


「……はぁ。こんなに驚いたのいつ以来だ? もし使いこなせなくても怒んないでくれよ?」

「馬鹿言うな。(わし)の目は確かだ。使いこなせなかったらお前の鍛練(たんれん)不足だ。」


そう(うそぶ)小僧(やつ)に軽く(にら)んで返してやった。

幾分(いくぶん)落ち着いたのか、恐る恐る値段を訊いてきた小僧(やつ)に金貨十五枚で答えた。


実際には金貨五十枚は下らない逸品(もの)だが、小僧(やつ)相手に金儲(かねもう)けがしたい訳じゃあないからな。

小僧(やつ)なら分割払(あとばら)いにしてやることも(やぶさ)かじゃないが、小僧(やつ)の覚悟がどの程度のものか見ておきたい。


(ランク)を落とすか?」


そう訊きつつも、目の前の剣を選ぶことを期待してしまう。


「親父さん、代金(かね)を持ってくるから待っててくれ。」


顔を上げた小僧(やつ)は、(わし)()を真っ直ぐ見るとそう言った。


「払えるのか?」

「足りなければギルドに借りてでも用意する。」


(なお)も問えば、覚悟のこもった眼差(まなざ)しで答えた。


「今払える分だけ持ってこい。残りは稼いで払え。」


それだけ言うと、小僧(やつ)に背を向け手入れに戻った。





お付き合いいただき、ありがとうございました。

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