表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と魔剣(あいつ)の冒険譚  作者: アスラ
10/118

side カンセル 1

振るう者の手を離れた武器(もの)、未だ振るう者の定まらない武器(もの)それらの武器(そいつら)を手入れしていると馴染みの小僧(やつ)がやって来た。


「親父さん、魔力通せる剣ある?」


十日ほど前に手入れしてやったばかりの剣があるはずの小僧(やつ)が訊いてくる。


小僧(こぞう)、この間の剣はどうした。寿命にはまだ間があるはずだ。」


(わし)の問いに小僧(やつ)は黙って剣を(さや)ごとカウンターに置いた。

作業の手を止め、置かれた(さや)を手に取り抜くと、剣は中半(なかば)から綺麗(きれい)に折れていた。

それを見て言葉にできない苛立(いらだ)ちが()き上がる。


昔、冒険者(きゃく)希望の(えらぶ)ままに売っていた時期があった。

だが強い武器を手にし、武器の力を()(ちが)傲慢(ごうまん)になる者、過信(かしん)して格上を獲物として狙い命を落とした者。

金がないからと、それまで使っていた剣より質を落とし、本来なら危なげ無く仕留められる相手に命を落とした者。

そんな冒険者(やつら)幾度(いくど)も目にし、いつしか本人の身の(たけ)に合う武器(もの)だけを売るようになった。


そんな昔が思い出され、一瞬感情に飲まれそうになったが、(わし)重圧(プレッシャー)に耐え、真っ直ぐに見返してくる小僧(やつ)()を見て、(わず)かな冷静さが戻った。


「何をして折れた。」

「昨日、森で遭遇(そうぐう)した荷車大の大猪(にぐるまサイズのボア)を仕留めるのに魔力を通した。」


()くと小僧(やつ)はそう答えた。

ガルブの森でそれほどの大猪(ボア)と言えば、中域から浅奥(せんおう)辺りの強さだろう。

そいつを相手にするのに魔力を流したのなら、この剣(こいつ)では強度が足りなかったはずだ。


もう少し魔力の親和性の高いものがいいだろう、と考えながら店の奥へ向かおうとしたところで、背後から声が掛かった。


「今の俺が扱える中で一番の剣が欲しい。」


腕に(おご)ったかと振り返り小僧(やつ)()を見たが、先程と変わらず真っ直ぐに見返してくるので、訳を目で問うた。


「買うなら今持てる最上の物を選ぶように助言を貰った。」

「…リュネか。待っていろ。」


助言…リュネの夢見(ゆめみ)か。あやつがそう言うのなら小僧(やつ)はこれから大事(おおごと)に会うんだろう。


店の奥に向かいながら、昔を思い出していた。


小僧(やつ)は幼い頃から冒険者(おとな)に付いて店に来ては、出ていけと威圧する(わし)(おく)しもせず、武器の選び方や手入れの仕方を教えて欲しいと頼んできた。


来る(たび)に真剣な()をして頼み込むのに(ほだ)されたのか、ある日、一言だけ言葉を返した。(わし)が言葉を返すと、小僧(やつ)は驚いた顔をした後、言われたことを口にしながらしばらく考え込み、嬉しそうに礼を言った。


たった一言、だが言われた内容とその意味を(わし)に聞き返すでもなく、(わず)かな経験と冒険者(おとな)たちの教えから(みずか)らで考え理解するのを見て悪くないと思った。

それからは小僧(やつ)(おと)れる(たび)に一言だけ答えてやるようになった。




お付き合いいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ