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俺と魔剣(あいつ)の冒険譚  作者: アスラ
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森での出来事

皆様の作品を楽しむうちに、自分でも書いてみたくなってしまいました。

お付き合いいただければ幸いです。

「ま、こんなもんか。」


陽が真上を過ぎて暫く経った。

ここはマルゴの町から徒歩で一刻半程のガルブの森の外縁(そと)。目当ての薬草もそこそこ集まったし、そろそろ町へ戻ろうかと考えたときだった。


離れたところで鳥が一斉に羽ばたいた。地に響く音が微かに聞こえ、すぐに周囲の音が消え、空気が変わった。

この場から離れるかどうか迷ったが、この辺りで昼間出るのは(ボア)ぐらいと思い、腰に下げた剣を抜いて、集中して向かってくるだろう気配を探る。


だんだんと近付く地響きの大きさが予想よりも大きいことに胸騒ぎを感じながら、両足に魔力を込め、進路に被らぬよう少し離れた木に跳び上がった。

さして間を置かず、先程まで俺が居た場所に荷車程もあろうかという大きさの大猪(ボア)が突っ込んできた。大猪(ボア)は突っ込んだ先の木を薙ぎ倒すと、人間(おれ)の匂いに気づいたのだろう、何かを探すように周囲を嗅いだ。


俺はその大きさに驚いたが、相手が大きいとはいえ、狩れないわけではない。

気を取り直し魔力を練ると、土と水の複合魔法『(ラスピ)』を発動した。すると大猪(ボア)の足下が見る間に泥に変わり、四肢を沈めると固まっていく。

こうやって相手の動きを止めて仕留めるのが、俺の狩りの定石(パターン)だ。

足止めに成功し、これで止めを刺せると木を降りようとした時、一度は固まった土がひび割れ、弾けるように砕け散った。


「嘘だろ。」


ほんの僅かしか止められなかったことで、思わず口をついて出た声に、大猪(ボア)が反応しこちらに突っ込んで来る。

このままだと木から放り出されバランスを崩すか、着地の瞬間を狙われるだろう。出来れば安全に仕留めたかったがしょうがない。


急いで魔力を練り直すと、『大気の塊(アエラススフェラ)』を大猪(ボア)の顔に向かって放ち、思い切り枝を蹴った。『大気の塊(アエラススフェラ)』は狙いどおり大猪(ボア)の顔に当たり、驚いて脚を止めると頭をぶんぶんと振り回し、すっかり気が逸れている。

その隙に上空から首筋に剣を突き刺した。


木を蹴った勢いも手伝って、剣は半ばまで埋まり、暫くもがいた大猪(ボア)はやがてその動きを止めた。

少し離れたところで何時でも跳べるよう構えていたが、完全に事切れた様子にゆっくりと近付いて仕留めたことを確認した。

その後、血抜きのために刺さった剣を抜こうと力を込めたところ、パキッと可愛らしい音を立てて剣が折れた。


「うわ、最悪。でもしょうがないか。結構無茶な使い方してるしな。」


たいして高くもない剣だ。どのみち近いうちに折れただろう。

主装備(メイン)の剣が折れた以上あまり長居はできないが、こんな大猪(おおもの)が出たんだ、暫くは周辺に危険も無いだろう。さっさと血抜きを終わらせるため予備の短剣(ショートソード)を抜いて大猪(ボア)に数ヶ所の傷を入れた。


半刻程待って漸く血抜きが終わった。あとは大猪(こいつ)を持ち帰るだけだ。とはいえ、さすがにこんな大猪(おおもの)を担いで帰る訳じゃない。

大猪(ボア)に触れたまま右腕に着けている腕輪(バングル)に触れると、一瞬にしてその姿が消えた。


腕輪(バングル)は空間魔法がかかった魔具で、出し入れするにはちょっと慣れが必要だが、容量は製作時の魔力量次第、生き物以外は大きさに関係なく入れられる便利な道具だ。


埋める(シピロノ)』の魔法で流れた血を埋めると、少し急いで戻った。

おそらく暗くなるまでには町に着くだろう。




お読みいただき感謝です。


1/2 前書きおよび誤字修正しました。

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