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思った以上に理事長室での話が長かったのか、残り僅かで二時限目が終わる。彼のクラスの二時限目の授業は体育だった。今更グラウンドに行ったところで何にもならないのだが、一応顔だけでも出しておこうかと理事長室の前で待機していた教師から渡された虫取り網を片手に、英二はグラウンドを目指し歩く。
当初は何処かで昼寝でもして時間を潰そうと考えていたのだが、手の空いている教師陣が総出ですねこすりの捜索に当たっているものだからサボる場所など何処にもなかった。虫取り網片手に慌しく駆け回る教師陣にご苦労さん、と頭の中で労いの言葉を投げておく。
グラウンドを歩いていると、授業時間の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。視線の先では教師に挨拶をして校舎へと向かうクラスメイト達の姿が見える。しかし、その中の女子生徒が数人、その場にしゃがみこんだ。目を凝らすと彼女達にいいように撫で回されているもふっとした何かが居るのに気付き、英二は駆け出した。
「あれー? 一条君じゃない?」
「え? 本当だ。まったく授業サボっといて何やってんだか……」
駆けて来る英二に気付き小さく手を振る山下と呆れた顔を見せる中島。そんな彼女達の足元で腹を見せ撫で回されていたもふっとした何かは素早くその身体を起こすと英二に向かって走りだした。
「あ、ちょっと!」
ソレを追い木下も走り出す。彼女の視線の先には網を振りかぶり走る英二とそんな彼に向かっていく犬。
英二が犬を捕まえようとしているのだろうと考えた彼女は全速力で走った。そんな彼女の後を山下と中島も追う。何か面白そうな事になりそうだから。
何やってんだアイツ等は!頭の中で毒を吐きながら英二は駆ける。状況的に考えてアイツ等はアレが妖怪だとは気付いていないのだろうな、なんて考えながら虫取り網を振りかぶる。
「動物虐めるんじゃないわよ!」
「どけ、バカ!」
すねこすりとの間に身体を無理矢理ねじ込んできた木下が邪魔になり、英二の視界からすねこすりの姿が消えた。マズイ!そう思ったときにはもう遅かった。彼の視界に映るのは雲ひとつ無い青空。まるでスローモーションのように自分の身体が仰向けに倒れていっているのが英二にはわかった。
このままではモロに後頭部から倒れる。本能的に少しでも衝撃を和らげようとした彼の手は近くにあった何かを掴んだものの、身体は抵抗虚しくそのままグラウンドに倒れてしまった。




