6話 王都ロートルシア
俺達はじいちゃん達に保護され王都へ運ばれた。
それから数日かけて王都にある医療施設で精密検査を受けたらしいのだが、俺はその間昏睡状態に陥っており目覚めたのは王都に着いてから1週間が経った頃だった。
「ここは…、」
「あ!ノラお兄ちゃんが起きた!」
「兄さん!良かった…。すぐおじいちゃんを呼んでくるから少し待ってて。」
どうやらここはじいちゃんの家の一室らしい。
ドタバタドタバタ!!!
「ノラ!!!」
「声がでかいよじいちゃん…。」
「よう目覚めた!お主が目覚めなかったら儂はもう立ち直れなかったかもしれん…!」
じいちゃんは空の異変に気づいてから護衛の者をおいてたった一晩で村までたどり着いたらしい。
しかし村があるはずの場所にあったのは大量の魔物とその親玉らしき魔物の死体、そして俺と俺を抱きかえながら泣いていたサラとソラだけだったらしい。
「ソラ、サラ…ごめんな。俺が不甲斐ないばっかりに。」
「それは違うよノラお兄ちゃん!あの魔王を倒したのだって…」
「サラ。…兄さん、守られたのは僕たちの方だよ。僕はおじいちゃんが来るまでの間気持ち程度に結界魔法は張っていたけれど、結局何も現れなかったから。」
ソラがサラの言葉を遮った。そのせいだろうか、話が少し噛み合わなかったのは。
「さて、じゃあ儂はとりあえずノラが目覚めた事を国王に報告にしに行こうかの。」
「国王に?」
「国王は国の危機を退けたノラにお礼を言いたいそうじゃ。」
「俺は何もしてないよ…。出来なかった。」
「ノラの戦いぶりはソラたちから聞いておる。そんなに自分を責めるでない。」
「なら俺も行くよ。あの襲撃で起こったことを俺の口から…ぐっ…!?」
起き上がろうとした時、全身に激痛が走った。
「ノラよ、自分の体をよく見るんじゃ。まだ到底動ける体ではないぞ。それに最初から国王はノラの口から事の顛末を聞く気らしいからのう。今日はひとまず目覚めたから近いうちに出向くと言いに行くだけじゃ。」
俺の体は傷だらけだった。そして腕と足にはギブスをつけられていた事に今気づいた。
「わかったよ…。」
俺が渋々そう言うとじいちゃんは静かに頷いてその場をあとにした。
そしてそれから数ヶ月ほど経ったころ。
俺はやっと不自由なく鍛錬を行えるまでに回復した。
「ノラお兄ちゃん!大変大変!」
「どうしたサラ。」
サラが俺の部屋に入って来た。
「お菓子がなくなっちゃったの!朝まではちゃんとあったのに、これは誰かの陰謀だよ!」
「わー、それは一大事だー。」
俺にそんな事を言って騒ぐサラ。こういうときは大抵お菓子をつまみ食いしてしまった時だ。
「ん?サラ、口元にお菓子がついてるぞ。」
「え!?そんな、計画は完璧なはずだったのに!」
「あぁすまん、やっぱり何もついてなかったよ。それで、計画って?」
「そ、それは〜…。」
俺の鎌かけにまんまとハマったサラを俺はソラに引き渡した。
その時のサラの世界が終わったかのような顔でソラの説教の壮絶さが伺える。兄で良かったよ。
事件から数ヶ月、家族と故郷を失った悲しみはそんな短い期間で立ち直れるほど軽くはない。
サラも幼いながらにそれなりに俺達に気を使わせないように頑張っている。まあさっきのが果たしてそうなのかは定かでは無いが、ソラもそのことは理解している為説教もここへ来てからは少し短い。ほんの気持ちだけ…。
「ノラよ、ここにおったか。」
サラとソラが居なくなったあとじいちゃんが来た。
「今日の鍛錬はもう終わったからね、なんかあった?」
「国王にノラの怪我の経過を話したら近い内に顔を出してくれと言われてな。」
そういえばあったなそんな事。王都に来てから特に何もやることが無いから俺は基本暇だった。
「そうか、俺はいつでも大丈夫だよ。じいちゃんの都合の付く日にでも一緒に行こう。」
「なら行くか!」
「今から!?」
「なんじゃ無理か?」
確かにいつでもいいとは言ったがまさか今から行くと思ってはいなかった俺は面を食らった。
「いや、大丈夫だけど随分急だなと思って。」
「こういう面倒くさいのは早めに済ましたほうがええんじゃよ。ハッハッハッ!」
国王からの呼び出しを面倒くさい呼ばわりとは流石じいちゃんだ。
「でもやっぱり正装とかはしたほうがいいのかな。俺そんな服持ってないよ?」
「そんなもん構う事はない。そうと決まればほれ、早く準備じゃ。でき次第行くぞ。」
じいちゃんに促され俺は国王が住む王宮へ向かった。
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